研究課題
著しいアルコールの摂取がないにも関わらずアルコール性肝炎類似の肝組織所見を呈する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、進行すると肝炎により肝細胞が傷害され、肝臓の線維化を引き起こし、肝硬変や肝臓癌に至る可能性がある疾患である。NASHの主な原因は、生活習慣病による肝臓への脂肪蓄積とそこから生じる脂肪毒性が引き起こす炎症と線維化があげられるが、発症・進展のメカニズムは未だに十分に解明されておらず、有効な治療薬も発見されていない。これまで本研究室では、メチオニン・コリン欠乏食投与により作製したNASHモデルマウス肝臓で血小板型12-リポキシゲナーゼの発現が上昇すること、この酵素が肝臓の中でも線維化において中心的な役割を果たす肝星細胞に局在し、NASH進展における肝星細胞の活性化と筋線維芽細胞への分化に伴って、その発現レベルが上昇することを明らかにしてきた。そこで本酵素を安定的に発現させた細胞株とMock細胞の遺伝子を網羅的に解析したところ、Mock細胞に比べてコラーゲン遺伝子の発現が低下していることが見出された。このことはNASH進展における肝線維化の段階で、血小板型12-リポキシゲナーゼが抑制的に働くことを示している。そこで、血小板型12-リポキシゲナーゼの発現調節機構を明らかにすることを目的とした。NASHにおいて血中濃度の上昇が報告されているサイトカインの1つである腫瘍壊死因子(TNFα)は、血小板型12-リポキシゲナーゼの転写活性の上昇とmRNAレベルの発現を上昇させ、同時にコラーゲン遺伝子であるCOL1A1の発現を低下させた。詳細な作用機序を明らかにするため、既に報告されている5’非翻訳領域のシスエレメントを一つずつ削除するように設計したルシフェラーゼアッセイ用プラスミドを構築し、検討を行った。
3: やや遅れている
血小板型12-リポキシゲナーゼの5’非翻訳領域のシスエレメントを一つずつ削除するように設計したルシフェラーゼアッセイ用プラスミドを構築し、検討を行ったが、当初予定していたよりも時間がかかっており、研究の進捗がやや遅れている。
腫瘍壊死因子(TNFα)によって発現の上昇する血小板型12-リポキシゲナーゼが、具体的にどのような機序で発現調節されているのかを明らかにしていくとともに、その発現を上昇させる機能性成分についても機序も含めて詳細に解析する。
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