研究実績の概要 |
歯周病は歯周病原細菌の感染により引き起こされる慢性炎症性疾患であり(Darveau, 2010)、65歳以上の高齢者では約6割が歯周病有病者である(歯周疾患実態調査, 2016)。歯周病は歯牙の喪失に関わるだけでなく、認知症(Iwasaki et al., 2016)や心血管疾患(Hokamura & Umemura, 2010)、肥満や糖尿病(Papageorgiou et al., 2015)などの加齢性全身疾患と関連する。 これまで、歯周病と全身疾患との関係はTNF-αなどの炎症性物質やIL-6やIL-8などの炎症性サイトカイン、酸化ストレスなどを介した間接的な関連であると説明されてきた(Page, 1998; 日本歯周病学会, 2016)。しかし、近年の研究において、歯周病を引き起こす歯周病原細菌が動脈硬化(Wada & Kamisaki, 2010)や骨格筋の減少(Kawamura et al, 2019)、認知症の成因であるアミロイドβの産生(Nie et al, 2019)などに直接影響する可能性が示されている。しかしながら、これらの先行研究はマウスを対象としており、歯周病原細菌がヒト高齢者の筋力や筋代謝、動脈硬化度、認知指標や脳容積などに与える影響は十分に検討されていない。そこで、本研究では地域在住高齢者コホートを活用して歯周病原細菌と骨格筋機能、血管機能、認知機能の加齢性変化との関連を明らかにする。 令和3年度は文京区在住の高齢者を対象とした観察型コホート研究“Bunkyo Health Study”の5年後追跡調査に参加した368名(男性149名、女性219名)の唾液を採取した。また、併せて口腔内写真の撮影、咬合力の測定も実施した。令和4年度もデータの採取を継続して実施する。
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