研究課題/領域番号 |
21K17645
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
原 百合恵 玉川大学, 農学部, 講師 (10813925)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | メトホルミン / クエン酸 / 糖尿病 / AMPK |
研究実績の概要 |
2型糖尿病治療薬のメトホルミンは、AMP-activated protein kinase(AMPK)の活性化により肝臓での糖新生を抑制し血糖値を低下させる。申請者は、マウスを用いた実験から、クエン酸摂取はメトホルミンの効果とは逆に肝臓での糖新生を亢進させ血糖値を上昇させることを明らかにしてきた。クエン酸とメトホルミンは拮抗的な作用を持つことから、クエン酸摂取がメトホルミンの効果を減弱させる因子となる可能性があるものの、両者の関係は明らかにされていない。そこで本研究では、クエン酸を投与した糖尿病モデルマウスのAMPK活性とAMPKにより変動する糖質代謝関連酵素の遺伝子発現および血糖値を測定することで、クエン酸の摂取がメトホルミンの血糖降下作用に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 令和3年度の検討では、メトホルミン(250 mg/kg)投与60分以降、血糖値は有意に低下し、メトホルミンとクエン酸を同時投与してもメトホルミンの血糖降下作用は減弱されないことが示された。令和4年度は、メトホルミンによる血糖降下作用がみられた投与60分時点の肝臓における糖質代謝関連酵素の遺伝子発現を測定した。その結果、メトホルミン投与により糖新生関連酵素フルクトース1,6ビスホスファターゼ(Fbp1)の有意な上昇、クエン酸投与により糖新生関連酵素ピルビン酸カルボキシラーゼ(Pcx)の有意な低下がみられた。AMPKの遺伝子発現はメトホルミン投与により上昇する傾向がみられたが、有意な差は認められなかった。このことから、2型糖尿病モデルマウスにおいてクエン酸投与はメトホルミンの血糖降下作用を減弱させないが、メトホルミンによる血糖降下作用はAMPK以外の因子により制御されている可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度および令和4年度に実施予定としていた、メトホルミンに対するクエン酸の効果持続時間と糖質代謝関連酵素の遺伝子発現変動について、メトホルミンおよびクエン酸は、投与60分以降糖質代謝関連酵素の遺伝子発現に影響を及ぼし、その変化にはAMPKが関与していない可能性まで示すことができたことから、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
クエン酸の摂取が2型糖尿病治療薬メトホルミンの血糖降下作用に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、クエン酸を投与した糖尿病モデルマウスの糖質代謝関連酵素の遺伝子発現および血糖値を測定した。令和3年度、令和4年度の実験条件においては、クエン酸はメトホルミンの血糖降下作用を減弱させないこと、メトホルミンおよびクエン酸は、投与60分以降に糖質代謝に影響を及ぼし、その変化にはAMPKが関与していない可能性まで示すことができた。今後は、クエン酸の投与量に応じてメトホルミンの血糖降下作用に及ぼす影響に違いがないか検討することを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも購入した消耗品の価格が安かったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は遺伝子発現測定にかかわる消耗品購入に充てる予定である。
|