研究課題/領域番号 |
21K17659
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
尾上 剛史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60809812)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 持続血糖測定 / 患者教育 |
研究実績の概要 |
本研究では、持続血糖測定器の一種であるフラッシュグルコースモニタリング(FGM)による持続血糖測定機会提供と学習支援を併用した糖尿病患者への新しい体験型学習方法の開発を目指す。 我々はインスリンを使用していない2型糖尿病患者100人を対象とし、FGM(FreeStyleリブレ)の糖代謝への有用性を検討するランダム化比較試験を世界に先駆けて行い、FGMの測定機会提供は、インスリンを使用していない2型糖尿病においても、HbA1cを有意に低下させ、治療満足度、血糖変動などの指標を改善させることを報告している。本研究ではまずこのFGM介入研究データを分析し、効果的な介入期間やFGMによる糖代謝改善の背景を検証した。その結果、FGMデータ解析では、週ごとの平均血糖値はベースラインと比較し1週目で有意に改善し12週目まで改善が継続していた。また平均血糖変動幅(MAGE)も2週目で有意に改善し、12週時点においても改善が持続していた。FGM使用により、BMIはベースラインと比較して12週・24週いずれの時点でも有意な改善を認めていた。また、治療継続意欲に関する糖尿病治療満足度の改善は12週時点および24週時点でのHbA1c改善に関連していた。またBMIの改善は24週時点でのHbA1c改善に関連していた。以上の結果、FGM測定機会の提供は比較的早期から糖代謝を改善させ、その改善は少なくとも12週に渡って持続すること、FGMによりもたらされる生活習慣改善は体重の減少にも寄与すること、治療継続意欲の向上がFGMによる測定機会提供終了後も持続する糖代謝改善に重要な役割を果たしていることが示された。 上記で得られた知見をもとに、次年度以降は初期教育が重要と考えられる2型糖尿病患者に対し、FGMによる測定機会提供と効果的な学習支援とを併用した前向き介入研究を実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第1段階として予定していた、FGM介入研究データベースの詳細な解析による介入の効果的な期間や対象者特性と効果の関連の検討に関しては、予定通り分析が完了した。週ごとの平均血糖値および平均血糖変動幅(MAGE)は比較的早期から改善を認めるとともに、その効果が少なくとも12週まで減弱しなかったことから、体験型学習においてFGMによる測定機会を提供する期間としては12週間を設定することが妥当と考えられた。前向き介入試験である「持続血糖測定機会の提供と学習支援による体験型学習の有効性の検証」の実施にあたっては、上記分析結果を学習支援内容および研究デザインに反映させるとともに、医療機器の保険適応外使用にあたるため、臨床研究法の特定臨床研究として生命倫理審査委員会に申請を行い承認を得ており、予定通り実施可能である。
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今後の研究の推進方策 |
初期教育が重要と考えられる2型糖尿病患者に対し、FGMによる測定機会提供と効果的な学習支援とを併用した介入が、糖代謝改善に与える影響を検討するランダム化比較試験「持続血糖測定機会の提供と学習支援による体験型学習の有効性の検証」を実施していく。試験実施にあたっては、参加患者リクルートがスムーズにいくよう、当初予定していた単施設研究から、参加施設を追加した多施設共同研究に変更し実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大が継続したことにより、当初参加を予定していた国際学会の現地開催が中止になったこと、既存データの分析を重点的に行った結果、FGMセンサーの年度内使用量が当初の想定よりも少なかったことから、次年度使用額が生じた。次年度に改めて学会参加を通じて情報収集や他の研究者との意見交換に務めると共に、FGMセンサーを用いた前向き介入試験についても予定通り研究遂行し、センサーを予定量を購入することで、使用予定である。
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