研究課題/領域番号 |
21K17664
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
飯塚 讓 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40832647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肥満 / インスリン抵抗性 / グリメピリド / EPA / DHA / 魚油 |
研究実績の概要 |
本研究では、肥満・2型糖尿病モデルマウスに対して、スルホニル尿素薬であるグリメピリドとEicosapentaenoic acid(EPA)・Docosahexaenoic acid(DHA)を併用させることで、2型糖尿病の治療効果を維持したままグリメピリドの投薬量を減少できるかを検証する。 令和5年度は、令和4年度の検討において血糖値の低下が認められなかったグリメピリドの最大用量に対して、魚油を併用することで有意な血糖降下作用が得られるようになるか調べた。その結果、グリメピリドと魚油の併用群は、有意な血糖降下作用が認められる用量のグリメピリド単独投与群(ポジティブコントロール)と同程度まで血糖値が低下することを確認できた。さらに、インスリン負荷試験を行ったところ、グリメピリドと魚油の併用群のみ有意なインスリン抵抗性改善効果が認められた。グリメピリドおよびEPA・DHAは脂肪細胞のアディポネクチン産生を増加させることが報告されているが、本研究ではグリメピリドによる血漿アディポネクチン値の上昇はみられなかった。一方、魚油の単独摂取群および併用群は、対照群と比較して同程度の上昇が認められたが、併用により相加・相乗的に増加することはなかった。これらの結果から、併用群で認められた血糖値の低下とインスリン抵抗性の改善に、血漿アディポネクチン値の増加が直接関与している可能性は低いと推察された。アディポネクチンはインスリン抵抗性改善作用を示すアディポカインとして着目していたが、今後は他の因子について解析を進め、併用群でインスリン抵抗性が改善するに至った要因を探ることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和5年度は、実験動物や消耗品の価格高騰を受けて一部の飼育計画と解析項目を変更することとなり、研究計画の修正が必要となった。このような中で、令和4年度までの予備検討をもとに決定したグリメピリドと魚油の用量でマウスに併用投与し、研究に必要な匹数の動物飼育およびサンプルの採集を終えることができた。血漿中の生理活性物質を含む幾つかのパラメータについて解析を進めたものの、当初の研究計画と比べると未だ遅れていることから、補助事業期間を1年間延長して各種サンプルの解析を引き続き行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間を1年間延長し、グリメピリドと魚油の併用によりインスリン抵抗性が改善した分子メカニズムを明らかにする。具体的には、脂質代謝の悪化によりインスリン作用が阻害されて全身の耐糖能が低下する「脂肪毒性」の影響、脂肪組織に浸潤する免疫担当細胞によって引き起こされ、インスリン抵抗性との関与が報告されている「脂肪組織の慢性炎症」、肝臓由来の分泌タンパク質でありインスリン抵抗性を惹起する可能性がある幾つかの「ヘパトカイン」を次のターゲットとして、関連するパラメータについて併用群で相加・相乗的な変化が認められるか検討を行う。くわえて、当初から予定されている糖新生の抑制、糖輸送担体(GLUT4)の細胞膜移行の挙動を調べ、インスリン抵抗性が改善した結果生じるパラメータの変化についても解析を進めることで、インスリン負荷試験の結果を裏付けるデータを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
価格改定による消耗品の値上がりから解析項目を見直し、優先度が比較的低く費用がかかる実験を取り止めたことで購入する物品が減り、結果的に今年度予算に残額が生じた。令和5年度に実験動物の飼育は終了し、今後の解析に必要な物品の多くは購入できていることから、差額はディスポ製品を含む消耗品の購入等に使用する。
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