研究課題/領域番号 |
21K17666
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
吉岡 健人 東邦大学, 薬学部, 助教 (50758232)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DHA / 脳動脈 / 血管平滑筋 |
研究実績の概要 |
脳血管特異的なドコサヘキサエン酸 (DHA) による収縮反応抑制機序を解明すべく以下の検討を行った。 ブタ脳底動脈と冠動脈における各種収縮刺激による収縮反応に対するDHAの抑制効果を検討した結果、DHAは脱分極性収縮反応に影響を与えないが、TP受容体拮抗作用により収縮抑制することが両血管で明らかとなった。一方で、シルドプロット解析によりブタ冠動脈ではこのDHAの抑制作用はTP受容体に対する競合的拮抗作用であることが示されたが、ブタ脳底動脈においては競合的拮抗作用に加えて、さらに別の収縮抑制機序の存在が示唆された。これらの結果は論文として国際誌に掲載された。ブタ脳底動脈でもDHAによるTP受容体拮抗能が示されたことは、DHAがTP受容体の関係する脳血管の異常収縮を抑制できる可能性を示唆しており重要な知見であると考える。 また、ブタ脳底動脈におけるエンドセリンによる収縮反応に対するDHAの抑制反応を詳細に検討した結果、収縮反応の抑制がTP受容体拮抗作用とは異なり時間的にやや遅れて観察された。これは、DHAによる収縮反応の抑制が代謝物によって引き起こされる可能性を示唆していると考えられる。この点に関しては代謝阻害剤等を用いてより詳細に検討する必要があると考える。 各種刺激薬によるブタ脳底動脈の収縮反応に対するDHAの効果を検討したところ、Gqタンパク質を介した収縮反応だけでなく、一部のチャネル内蔵型の受容体刺激を契機とした収縮反応も阻害する傾向が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブタ脳底動脈を用いた検討によってDHAがいくつかの刺激薬による収縮反応を抑制することを見出しており、概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
脳底動脈特異的なDHAの広汎な収縮抑制作用はDHAの代謝物によって引き起こされる可能性がある。そこで各種代謝阻害薬存在下で、エンドセリン等による収縮反応に対するDHAの効果を検討する予定である。 また、他組織での検討結果からDHAには特定のチャネルに対しての阻害効果がある可能性が示唆されている。DHAの脳底動脈におけるTP受容体拮抗以外の収縮抑制効果を説明しうるものとして期待されるため、これらに関連する分子の脳底動脈での発現を確認する予定である。また、同時にこれらの分子のクローニングを進めており、いくつかのチャネルについては発現ベクターの構築が完了している。今後、それぞれのチャネルの強制発現系をもちいて細胞レベルでDHAによるチャネル阻害効果を検討する予定である。
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