研究課題
ブタ脳血管特異的なドコサヘキサエン酸 (DHA) による収縮反応抑制機序を解明すべく以下の検討を行った。前年度はDHAの有するTP受容体拮抗作用がブタ脳底動脈でも再現されることと、それに加えて冠動脈では見られないものの脳底動脈ではさらなる収縮抑制作用があることを見出していた。脳底動脈のエンドセリンによる収縮反応に対する抑制にDHAの代謝物が関わっている可能性を検証するため代謝阻害薬 (CYP阻害薬: SKF-525A、エポキシゲナーゼ阻害薬: Nordihydroguaiaretic Acid) 存在下で脳底動脈のエンドセリンによる収縮反応を観察したところ、これらの阻害薬がDHAとは無関係にエンドセリンによる収縮反応を阻害することがわかった。そのため、代謝阻害薬を用いた検討は一旦中断することとした。また、チャネルを介した収縮反応の制御にDHAが関わっている可能性を検討するため、カリウムチャネルに着目した検討を行った。BKチャネル阻害薬 (イベリオトキシン) 存在下ではエンドセリンによる収縮反応が増強し、この収縮反応にBKチャネルが関与している可能性が示唆された。しかし、この増強された収縮反応もDHAは強力に抑制したことから、少なくともDHAがBKチャネルの開口を介して収縮反応を抑制する可能性は排除された。また、DHAと同様にn-3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸 (EPA) にもTP受容体拮抗作用があることと、脳底動脈においてはTP受容体拮抗作用以外の収縮抑制作用があることを見出した。これらの結果は論文として国際紙に掲載された。
3: やや遅れている
代謝阻害薬の検討がうまくいかなかったため、やや遅れている。
現在、カリウムチャネルに対してDHAが開口作用をもつ可能性を見出している。一方で、カリウムチャネルには多くの分子種が存在しているため、まずは脳底動脈での発現の多いカリウムチャネルの分子種をリアルタイムqPCRで同定する予定である。その後、これらのチャネルのをクローニングし、チャネルに対するDHAの効果を検討する予定である。
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Pharmacology Research & Perspectives
巻: 10 ページ: e00952
10.1002/prp2.952
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 12829
10.1038/s41598-022-16917-6
https://www.toho-u.ac.jp/press/2022_index/20220510-1203.html
https://www.toho-u.ac.jp/press/2022_index/20220816-1223.html