研究課題/領域番号 |
21K17667
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松井 智子 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (40845062)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心理社会的支援サービス / がん患者 / 援助要請行動 |
研究実績の概要 |
多くのがん患者は問題を抱えていても心理社会的支援サービスを利用しない。本研究は,行動変容理論を応用し,問題を抱えるがん患者が心理社会的支援サービスに対する援助を希求しやすくなるようなメッセージを,対象者の特徴に応じて開発することを目的とした。 今年度はがん患者の心理社会的支援サービスの利用を予測するモデルとしてHealth Action Process Approach(HAPA)が適合するか検討するために,まずは尺度作成に取り組んだ。あわせて,心理社会的支援サービスの利用を終了した人の実態を把握することも目的とした。 長期入院中ではない,がんの診断から5年未満という条件を満たしたがん患者約約500名を対象とし,web調査を実施した(Time1)。HAPAの構成要素(結果予期,リスク認知,自己効力感,行動意図,行動計画)に関する項目については,既存の尺度や先行研究を参考にしながら,がん患者に適した内容となるよう,心理学を専門とする共同研究者とともに考え,約60項目用意した。そのほか,属性項目(年齢,性別など),治療状況,がん種,身体状況,精神的健康,心理社会的支援サービスの利用状況や現在利用していない理由などについて尋ねた。 510名(平均年齢62.1歳,男性276名,女性234名)から回答を得た。がんに罹患してから心理社会的支援サービスを利用した経験があった者は43名であり,「がん相談支援センター」を利用したと回答した人が最も多かった(21名)。「利用したことはあるが,今は利用していない」と回答したものは28名で,利用を終了した理由で最も多かった回答は「問題が改善・解決したから」であった。 尺度作成に関してはデータ収集中であるものの,これまでほとんど報告のなかった利用終了者の実態が把握できたことは,今後の援助要請研究にとって有益な知見を得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属機関の変更に伴い、研究環境が変わったため,研究開始までの準備に時間を要した。また,当初の計画に変更を加えた。3時点のデータを収集すること,心理社会的支援サービスの利用を終了した人の研究もあわせて実施することとしたため,研究開始までの準備に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,Time2, Time3の調査を実施し,行動計画や心理社会的支援サービスの利用状況について尋ねる。Time3までの調査が終了したのち,Time1~Time3までのデータをマッチングさせ,データクリーニングを行う。そして,HAPAの構成要因を測定する尺度を作成するため因子分析を行い,尺度の信頼性および妥当性の検討を行う。その後,HAPAモデルの適合について検討する予定である。 また,これまでの研究で得た知見をもとにメッセージを精緻化し,がん患者約450名を対象にWeb調査を行い,メッセージの有用性および好ましさについて評価してもらう。
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