研究課題/領域番号 |
21K17668
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
後藤 亜由美 中部大学, 生命健康科学部, 助手 (20780969)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨格筋 / CREG1 |
研究実績の概要 |
本年度は当初の研究計画に沿って、CREG1が骨格筋分化に及ぼす作用について検討した。マウス由来筋芽細胞株C2C12における骨格筋分化に伴うCreg1の遺伝子発現を評価したところ、骨格筋分化誘導3日後では骨格筋分化誘導前と比較してCreg1の遺伝子発現が有意に高値を示した(p<0.05)。C2C12におけるCREG1の動態を調べるために、内因性CREG1をノックダウンし精製CREG1を添加したところ、細胞表面上に存在する受容体に結合した全長CREG1(~37kDa)と細胞内に取り込まれてプロセシングを受けたCREG1(~24kDa)の発現はCREG1添加後の時間経過に伴い増加することが明らかとなった。またCREG1の受容体として考えられているIGF2受容体存在下では、精製CREG1の添加により全長CREG1ならびにプロセシングを受けたCREG1の発現が有意に増加することが確認できた。一方で、IGF2受容体ノックダウン下では精製CREG1の添加によりプロセシングを受けたCREG1の発現が有意に低下することを確認した。したがって、骨格筋におけるCREG1もIGF2受容体に結合することで細胞内に取り込まれることが明らかとなった。次にCREG1における骨格筋タンパク質合成経路に及ぼす影響を評価したところ、タンパク質合成経路であるAktとp70S6Kのリン酸化は精製CREG1の刺激時間に伴い増加することが明らかとなった。さらに、タンパク質合成シグナル伝達経路においてAktの上流に位置するphosphoinositide 3-kinase (PI3K) の阻害剤であるLY290042を用いることでCREG1刺激によるタンパク質合成経路の活性が抑制された。したがって、C2C12へのCREG1刺激はPI3K-Akt-mTORを介してタンパク質合成を促進させる刺激であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響により研究に対する様々な制限があったが、その中で骨格筋細胞におけるCREG1の分化ならびにタンパク質合成経路における役割についての重要な知見が得られたことは当初の研究計画通りであり、今後の更なる研究進展に繋がると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究計画に沿ってCREG1が骨格筋再生過程に及ぼす作用について検討する予定である。本検討では我々の研究室で独自に樹立したCREG1-Tgマウスは骨格筋CREG1遺伝子の発現量が野生型マウスのおよそ2倍であることが明らかとなったため、当初予定していた研究内容を一部変更して、内因性骨格筋CREG1の増加が骨格筋再生に及ぼす影響について評価することとした。得られたサンプルは、RT-qPCRやWestern blot法を用いて、筋タンパク質合成・分解バランスの変化や組織化学的解析として免疫蛍光染色にて筋再生過程に重要な筋衛星細胞数の測定や再生筋線維の指標である中心核筋線維数などを測定し、CREG1投与が筋損傷-再生過程に及ぼす影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、研究を推進する中で予想外の結果を得ることができ、より詳細な評価をすることで研究が大きく推進する可能性が出たため前倒し支払請求を行った。しかしながら新型コロナによる研究制限が出てしまい、予定していた実験を行うことができなかったため使用できなかった予算が繰り越しとなってしまった。
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