研究課題/領域番号 |
21K17672
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
柴田 紗知 福山大学, 薬学部, 講師 (90803940)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 食品・栄養成分 / 関節リウマチ |
研究実績の概要 |
健康寿命を縮める主な要因の一つである運動器疾患の患者数は増加傾向にある。運動器疾患の発症や進行抑制に食生活も重要な役割を果たすと考えられている。報告者は、変形性関節症と骨粗鬆症の双方へ効果を発揮する食品・栄養成分を明らかにしてきた。これらの疾患予防効果の作用機序として、炎症抑制作用にくわえ免疫系へ作用する可能性を見いだした。 そこで本研究においては、変形性関節症や骨粗鬆症へ有効に作用する食品・栄養成分が自己免疫異常と関連の深い運動器疾患である関節リウマチへの予防効果も示すことを明らかにすることを目的に検討を進めた。さらに、その詳細な作用機序を明らかにするとともに、関節リウマチに伴う脳や腸といった各種臓器の損傷に対して食品・栄養成分が有効に作用することを解明すべく検討を進めた。 本年度は、食品・栄養成分の関節リウマチ予防効果を検討するモデル動物の作成と、有効な食品機能成分の探索を行うために、スクリーニング実験を実施した。その結果、食品機能成分による効果を明らかにするのに適した抗体処理条件を設定するとともに、いくつかの食品・栄養成分が関節リウマチ予防効果を示す可能性があることを見いだした。 また、作用機序の解明を目的に細胞レベルでの実験を実施した。その結果、カルノシン酸やピシフェリン酸などいくつかの食品・栄養成分が関節リウマチの進行と関連のあるインテグリンの発現を抑制することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食品・栄養成分による関節リウマチ予防効果をモデル動物への投与実験で明らかにするとともに、採取する組織や培養細胞を用いた検討で作用機序を解明することを目的に検討を進めている。本年度は、関節リウマチ予防効果を検討するモデル動物を作成し、食品・栄養成分の投与実験を行うとともに、細胞レベルにおいて、食品・栄養成分による関節リウマチ予防効果の作用機序解明を進めた。その結果、食品・栄養成分による関節リウマチ予防効果を検討するのに適切な抗体投与濃度を決定した。そして、投与実験を行い、食品・栄養成分による関節リウマチ予防効果を明らかにした。 さらに、フローサイトメトリー法で解析した結果、食品機能成分のうち、ローズマリー由来カルノシン酸やヒノキ科サワラの木の成分であるピシフェリン酸がインテグリン発現を抑制することが分かった。くわえて、カルノシン酸はRGD配列認識インテグリン等を介した細胞接着を濃度依存的に抑制することが分かった。また、これらの結果は、細胞毒性の関与はみられないことも確認した。以上の結果から、食品機能成分によるインテグリン発現抑制を介した関節リウマチ予防効果が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
食品・栄養成分の投与実験を進めるとともに、作用機序を解明する。また、関節リウマチモデルマウスに食品・栄養成分を投与し、脳や腸などの各種臓器へどのような影響を及ぼすか解析する。飼育期間中に、十字迷路試験や痛覚感知試験等を実施し、抗うつ効果や抗不安効果について検討する。また、糞を回収し病原菌の排除や毒素の中和に関わる免疫グロブリンAについてELISAで解析する。 ト殺後には、各種臓器を回収し組織化学解析や遺伝子発現解析等を実施する。脳については、コラーゲン抗体誘導炎症性関節炎モデルマウスにおいて、神経炎症と関連するionized calcium binding adaptor molecule 1(Iba1)の発現が上昇することから、Iba1等の発現を免疫染色やreal-time PCRで検討する。小腸については、HE染色で組織形態を観察するとともに、粘膜上皮バリア機能に関連する因子のムチンや抗菌ペプチドの発現をreal-time PCRで解析する。また、関節リウマチの合併症であるアミロイドーシスでは肝臓にアミロイドが沈着し機能低下を引き起こすことから、肝臓のアミロイド沈着を免疫染色で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り越した2万円に次年度予算を一部合わせて食品機能成分を購入する予定である。
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