我が国は超高齢社会へと突入しており、加齢に伴い骨格筋量・筋力が減少する加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)が社会的健康問題として重要視されている。サルコペニアは、日常生活動作を低下させる原因であり、転倒・骨折のリスクを増加させ、要介護状態へ移行させる主な原因となっている。そのため、サルコペニアの原因究明、予防・治療法の確立は重要である。そこで本研究では、サルコペニアの原因候補であり、加齢によって生じるミトコンドリア機能異常とアミノ酸代謝異常(筋タンパク質同化抵抗性)に着目し、その関連を明らかにすることを目的とした。 本年度は、正常老化を示す senescence-accelerated mouse resistant 1(SAMR1)と、老化促進モデルマウスであり、サルコペニアモデルと考えられているsenescence-accelerated mouse prone 8(SAMP8)における骨格筋中アミノ酸濃度を測定した。その結果、SAMR1、SAMP8ともにロイシン摂取によりロイシン濃度は増加し、特に、SAMP8においては著しく増加していた。次に、アミノ酸欠乏によりリン酸化が増加するeukaryotic initiation factor 2 α(eIF2α)のリン酸化をウエスタンブロット法により解析した結果、SAMR1、SAMP8では変化が認められなかった。これらの結果から両マウスにおいてアミノ酸欠乏が生じている可能性は低いことが示唆された。さらに、ロイシンセンサーの1つであるleucyl-tRNA synthetase(LRS)のタンパク質量も両マウスで同程度であった。このため、ロイシン感受性も同程度であることが示唆された。
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