これまでの研究から、エストロゲン欠乏は大腸上皮の恒常性に寄与せず、腸管透過性の亢進による炎症性物質の全身への流入を増加させないことが明らかとなった。その後、骨髄の遺伝子発現の網羅解析から、エストロゲン欠乏は骨髄細胞のフェロトーシス経路に影響を及ぼしているという結果が得られた。そこで、最終年度は骨芽細胞(骨形成細胞)および破骨細胞(骨吸収細胞)による細胞実験からエストロゲン欠乏がフェロトーシスに関連する炎症を増加させることで骨吸収を誘導するのか否かを検証することで、閉経後骨粗鬆症の新規メカニズムの探索を行うこととした。まず、マウスの頭蓋骨由来骨芽細胞(MC3T3-E1)にグルタチオンペルオキシダーゼ(gpx-4)阻害剤を作用させ、骨形成の初期成熟マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性への影響を検討した。その結果、gpx-4阻害剤は骨芽細胞の成熟促進条件下においてもALP活性に影響しなかった。次に、マウス由来マクロファージ様細胞(RAW264)にreceptor activator of nuclear factor-kappa B ligand (RANKL)を作用させ破骨細胞への誘導および成熟条件の検討を行い、次いで、gpx-4阻害剤が破骨細胞の成熟を亢進するのか否かを検討することとした。しかし、RAW264では継代培養回数、RANKL濃度、処理日数およびRANKLのサプライヤーに関係なく、破骨細胞への分化が観察されなかった。今後、RAW264.7を用い、フェロトーシスが破骨細胞の成熟および骨吸収の増加に影響することでエストロゲン欠乏による骨密度低下を引き起こすのか否かを検証する。
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