骨格筋幹細胞は我々の体で唯一骨格筋線維を再生できる組織幹細胞である。そのため、遺伝性筋疾患をはじめとした細胞治療や再生医療への応用が期待されている。しかし、骨格筋幹細胞を細胞移植のために生体外に取り出し、増殖させると多くの細胞は自発的に分化してしまい、細胞数の確保ができず、また幹細胞として機能が低下することからより生体に近い状態での培養方法の開発が期待されている。そのためには生体内でどのように骨格筋幹細胞が幹細胞性を失わず、増殖能力を維持し再生を行っているのかの分子基盤の理解が必須である。骨格筋幹細胞は均一の集団ではなく、非常に不均一な細胞集団であり、特に筋形成時には非常に多様な細胞集団となる。昨年度より取り組んできた、この多様な骨格筋幹細胞集団のうち、未分化細胞と活性化細胞とを見分ける遺伝子改変マウス MyoD ノックイン (KI) マウスの作成に成功した。 本年度では、骨格筋幹細胞のうち、未分化集団、活性化集団、休止期集団をソーティングし、網羅的遺伝子発現解析を行なった結果より、未分化集団及び活性化集団でそれぞれ発現が高い遺伝子群を同定することに成功した。特に、本年度では活性化集団で発現が上昇してくるDusp13/27 の遺伝子の機能解析をIn vitro 実験を中心に行なった。現在、これらの遺伝子の欠損マウスを作成し、In vivo の機能解析や骨格筋幹細胞での機能を行なっている段階である。今後は、未分化集団で発現が高い遺伝子にも注目し、機能解析を行うことで、将来的に未分化維持や活性化や分化を促す新たな標的になることが期待される。
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