研究課題/領域番号 |
21K17688
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
湯浅 正洋 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00756174)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビオチン補給 / 胎児 |
研究実績の概要 |
前年度までの検討で,妊娠直後よりビオチン欠乏飼料を与えたマウスにおいて,口蓋裂の発症頻度が増加することが再確認されている.また,ビオチン欠乏マウス母体におけるエネルギー代謝異常の有無を確認したところ,アミノ酸代謝に変動傾向があることが確認された.本年度は,ビオチン欠乏時妊娠マウスへのビオチン補給が,口蓋裂の発症頻度等へ及ぼす影響を,ビオチン投与期間の違いから明らかにした. 妊娠期10日目以降に,3日間,4日間,5日間のビオチン補給させる群をそれぞれ設け,胎児における口蓋裂の発症頻度を確認したところ,ビオチン補給しなかったマウスでは約6割の胎児に口蓋裂がみられたのに対し,すべての補給群で口蓋裂がみられなかった.一方,母体血清のビオチン濃度は,ビオチン補給しても上昇は認められず,母体においては短期的なビオチン補給による欠乏状態の改善はみられないことが示唆された.胎児肝臓のビオチン濃度も母体血清と同様の傾向であったが,ビオチン投与日数が長いほどビオチン濃度が高くなる傾向にあった.また,肝臓ビオチン濃度を対照群で比較すると,胎児は母体の約8倍のビオチンを含んでいることが明らかになった.以上より,母体がビオチン欠乏状態であっても,ビオチン補給が口蓋裂発症予防に有益な可能性が示唆された.また,母体のビオチン欠乏時には,胎児の重要な成長因子であるビオチンが,優先的に胎児に取り込まれていると推察される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は予定している実験を行うための研究環境整備を行ったため,研究の進捗が遅れている.これは前年度の所属先変更に伴うものである.また,学内飼育施設が他キャンパスにあることから,本務(授業等)で多忙な時期には動物実験ができないこと,本務が比較的少ない時期に所属学会の実行委員等社会活動が入ったことから,予定していた実験が進んでいない.しかし,共同研究者と連携し,最終年度に予定していたビオチン補給試験を行うなど,当初予定していた計画の一部を遂行した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに実験・研究環境の整備は概ね終了したことから,2年目に予定していた妊娠時と非妊娠時における母体に対するビオチン欠乏の影響と,これにより生じる代謝変動の有無を明らかにする予定である.1年目の検討で,妊娠期のビオチン欠乏によりアミノ酸代謝の変動傾向が確認されていることから,まずは妊娠によってこの代謝を担うビオチン依存性カルボキシラーゼ活性や発現量に変動が生じるか否かを明らかにする.また,臓器中ビオチン濃度を測定し,どの臓器でビオチン欠乏により代謝変動が生じやすいかを類推する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に続き,所属先変更に伴う研究環境整備に時間を要したことから,次年度使用額が生じた.これは,2年目に予定していた動物実験の実施に充てる予定である.
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