研究課題/領域番号 |
21K17706
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
柴田 将拡 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (10806095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自律分散システム / モバイルエージェント / g-部分集合問題 / 均一配置問題 / 動的ネットワーク / 自律分散ロボット / 個体群プロトコル |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ネットワーク中を自律的に移動する複数体のモバイルエージェント(以下、エージェント)間の協調動作を、ネットワークの構造が動的に変化する状況下でも正しく動作するようなアルゴリズムを設計することを目的とする。 2021年度は主にg-部分集合問題を解決するアルゴリズム設計に取り組んだ。g-部分集合問題は、ネットワーク中に分散しているエージェントが、g体以上ずつのグループに分かれて集合するような自律的な移動を要求する問題である。この問題を、1-interval connected ring と呼ばれる、各ラウンドで高々1辺が消失しうるようなリングネットワーク上で考察し、gの値とエージェント数の間の関係に着目しつつ、問題の可解性やアルゴリズムの性能を解明した。結果として、エージェント数がgの約3倍以上なら、最適コスト(エージェント移動数)で問題を解決できることを示し、この結果は国際会議に採択された。また、エージェント数がgの3倍未満の場合における可解性も解明し、現在は論文誌へ投稿準備中である。 また、上記の結果を拡張し、対象とするトポロジを各列リング、行リングが1-interval connected ringで表現されるような動的トーラス上でもg-部分集合問題を考察した。結果として、n×n動的トーラス上に存在するエージェント数がgnよりも少ない場合は、g-部分集合問題が解決できないことを示した。また、エージェント数が3gnよりも大きい場合に問題を解決するアルゴリズムの設計を行った。今後は現在提案しているアルゴリズムよりも少ないエージェント数、もしくは良いコストで問題を解決できるアルゴリズムが存在するかを考察中であり、まとめた結果を国際会議へ投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の実績概要に加え、均一配置問題と呼ばれる、エージェントがネットワーク中に均等に配置するような自律的な移動を要求する問題を、1-interval connected ring 上で取り組み、2020年度に国際会議に採録された結果を現在は論文誌へ投稿し、条件付き採録の判定を得ている。このように、動的ネットワーク上でエージェント協調動作を実現するアルゴリズムに関して、継続的な成果が出ていることから、進捗は順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き動的トーラス上でg-部分集合問題を解決するアルゴリズム設計を行う。また、対象トポロジを動的グリッドとしたときに、均一配置問題や、探索問題という、各ノードが少なくとも1回は訪問されるようなエージェントの自律的な移動を要求する問題に対して、問題を解決するために必要なエージェント能力の条件やネットワークの動的な変化に関する条件の解明を行う予定である。さらに、得られた結果から、トポロジの平均次数と問題の可解性にどのような関係があるのかを考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、研究打ち合わせや外部発表用の旅費を執行しきれず、また、前回に採択された若手研究の経費も執行しきれていないという状況のため、次年度使用額が生じた。 使用計画としては、主に感染が比較的緩やかな時期における出張のための旅費や、学会の(オンライン)参加費に経費を執行する予定である。
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