研究課題/領域番号 |
21K17711
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊藤 勝 日本大学, 理工学部, 助手 (90778375)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非線形最適化問題 / Frank-Wolfe 法 / ヘルダー条件 / 双曲型錐 / 自己同型群 |
研究実績の概要 |
本年度の研究は主に次のふたつの課題に取り組んだ。ひとつは、機械学習やデータ分析における大規模最適化問題の解法として研究が活発に行われている Frank-Wolfe 法に関して、問題構造に適応するパラメータの開発である。もうひとつは、双曲型錐と呼ばれる凸錐の構造に関する研究である。 ひとつ目の Frank-Wolfe 法の研究では、対象とする問題に、ヘルダー条件という滑らかさを仮定して、その問題に対して有用な Frank-Wolfe 法のパラメータ設定の開発に取り組んだ。先行研究で知られた方法を詳しく調査し、その欠点を補う新しいパラメータ設定を模索した。ヘルダー条件という問題構造の特徴を表す定数は、一般に事前に知ることが困難であるが、先行研究ではこのパラメータが既知である前提でアルゴリズムが構築されるため、実用性が低いという欠点があった。本研究の成果として、パラメータが未知であっても実現可能な Frank-Wolfe 法のパラメータ設定を構築することに成功した。この成果を、国際学会で発表した。 ふたつ目の双曲型錐に関する研究では、双曲型錐に対して微分を用いて定義される緩和した双曲型錐(derivative relaxation)がどのような構造を持つかを調査した。特に、双曲型錐の特別な例である、非負象限と半正定値錐に対して、その緩和した双曲型錐を調査した。本研究では、これらの緩和した双曲型錐が定める自己同型群の構造を決定することに成功した。自己同型群の構造がわかったことにより、これらの緩和した双曲型錐が緩和する前と比較して、等質性という性質を失うことが判明した。この成果は、次年度に国際学会や国際学術論文誌での発表を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的のひとつは、問題構造に適応した最適化アルゴリズムの開発であり、本年度に得られた Frank-Wolfe 法に関する研究成果では、ヘルダー条件という問題構造に対しての自動適応を可能にするアルゴリズムの開発に成功した。ヘルダー条件は、従来のアルゴリズムの解析でよく用いられるリプシッツ条件の一般化であり、ヘルダー条件に現れる定数の推定が難しいことから、この成果は実用的にも有用な応用が期待される。以上のことから、本研究の進捗状況は研究計画に対して順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に得られた研究成果をさらに洗練してより深い調査を目指すとともに、他のアルゴリズムに関しても同様の研究の可能性を模索する。 Frank-Wolfe 法に関する成果は、ヘルダー条件より一般の問題構造に対しても有用であるか、もしくは有用な手法が開発できるかを調査する。特に、強凸性という仮定またはその一般化が満たされるような問題構造に対して、Frank-Wolfe 法が加速するかどうかを調査する。また、射影型の一次法やその他の非線形最適化アルゴリズムについて、自動適応性を調査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、新型コロナウイルス感染症(COVID19)による国際学会のオンライン開催によって未使用となった旅費がほとんどであり、それ以外についてはほぼ計画通りに予算を執行した。次年度使用額は、研究資料の調達を行ったり、より積極的に研究成果の発表を行うことに充てる予定である。
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