研究課題/領域番号 |
21K17714
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江本 遼 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (80878447)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 疾患関連解析 / 脳画像データ / 深層モデル |
研究実績の概要 |
社会の急速な高齢化により、認知症などの精神疾患患者の脳機能や形態の客観的評価がますます必要とされている。疾患に関連する脳の部位の検出、及び特定された部位と疾患の関連の大きさを推定するため、脳画像データの持つ空間的構造だけではなく機能的構造を脳全体で統計的にモデリングする必要がある。本研究では、関連構造の統計モデリングに機械学習分野で用いられる深層モデルを導入し、さらに既知の脳の機能構造を取り入れた方法を開発することで、脳画像データの持つ空間的、機能的構造を考慮した疾患関連部位・脳機能の検出、さらに検出部位・機能の有意性の定量的評価を行うための統計的手法の開発を目指す。 手法の開発においては、脳画像の背後にある潜在的構造を表現できるモデルを構築し、その推定方法を確立し、推定されたモデルを用いた潜在的構造・部位の検出と統計的有意性の評価と、潜在構造・部位の効果サイズ推定法の評価をしたのち、実データへの適用を目指す。 本年度は脳画像の背後にある潜在的構造を表現できるモデルの構築とその推定方法の構築に焦点をあてて研究を行った。その中で、機械学習分野で用いられているボルツマンマシンに対して、既知の脳機能学的知見をモデルに取り入れるために自然な制限を加えると、モデルの表現力が大きく限定されることが判明した。この問題の解決のためにモデルの拡張の必要があり、拡張したモデルの理論的性質の検討を行なっている。拡張したモデルは、関連解析の結果を脳機能学的に意味のある結果として解釈可能なモデルという点で重要である。 さらに、開発手法の医学データへの適用を通した有用性の実証に向けて、脳画像を含む公開データの調査、検討を共同研究者とともに行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、既知の脳機能学的知見をモデルに取り入れることを機械学習分野で用いられているボルツマンマシンを用いることで達成予定であったが、モデルの表現力が大きく限定されることが予期せず判明したため、この点を理論的に解決する必要がある。令和3年度にモデルの構築と推定方法を確立し、令和3年度から令和4年度にかけて潜在的構造・部位の検出のための手法と効果サイズ推定法を開発したのち、数値的な評価を行う予定であったため、モデルの構築が完了していない点では進捗が遅れているが、理論的性質の検討の中で、推定法の開発と数値的な評価を行っており、当初予定していた令和4年度の計画と重複しているため、研究全体はやや遅れて進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
拡張したモデルを用いた、潜在的構造・部位の検出のための手法と効果サイズ推定法を開発したのち、数値的な評価を行う。また、拡張した潜在構造のモデルと階層混合モデリングとベイズ流事後推定の方法を組み合わせることで、潜在構造・部位の効果サイズ推定法を開発する。さらに、有用性を実証のための実データへの適用をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
支出予定であった成果発表のための旅費及び宿泊費が進捗および、COVID-19の影響により次年度になった。これらは次年度に支払・実施される予定である。
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