研究課題/領域番号 |
21K17717
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
井桁 正尭 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10821788)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 再発事象 / 過分散カウントデータ / 臨床試験デザイン / 例数設計 / 適応的デザイン / 盲検下例数再設計 / ロバスト化 |
研究実績の概要 |
医薬品開発の効率化を目的として,試験デザインを柔軟に変更可能な適応的デザインが注目されている.アメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration; FDA),欧州医薬品庁 (European Medicines Agency; EMA) から適応的デザインに関するガイダンスが発出され,臨床試験における適応的デザインの利用が加速している.しかし,既存の適応的デザインは仮定したモデルのパラメータ推定値に基づくため,モデルを誤指定した場合にデザインを不適切に変更する可能性がある.本研究では,モデルの誤指定に対して頑健な適応的デザインの開発を目指す. 本年度は,てんかんや喘息の年間発作回数等の個体内で繰り返し生じる再発事象の比較臨床試験を想定した盲検下例数再設計法の研究を行った.分散に対するモデルを誤指定した場合に,中間データに基づく従来の分散パラメータ推定量は,最終解析時点の適切な推定量とならないことを明らかにした.さらに,この問題が例数再設計時点の中間データと最終解析時点のデータの観察期間の分布が異なることに起因することに着目し,中間データの観察期間分布を最終解析時点の分布に補正する重みを導出し,分散パラメータの重み付き推定量に基づく盲検下例数設計手順を開発した.シミュレーション実験により動作特性を評価したところ,従来法と比べて,提案法はより高い精度で治療効果を検出できることが示された.これらの研究結果について論文投稿を行い,現在改訂を進めている. 個体内で複数回または複数項目の再発事象を観測する多変量再発事象に対する例数設計及び盲検下例数再設計では,複数回または複数項目の観測値の間に生じる相関の構造をモデル化する必要がある.このとき,相関構造を誤指定する可能性がある点に着目して,上述の研究結果を拡張した方法の開発を進めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再発事象の比較臨床試験を想定した盲検下例数再設計法の研究については,論文投稿及びその改訂を進めており,おおむね計画通り順調に進展している. また,多変量再発事象の比較臨床試験を想定した例数設計法及び盲検下例数再設計法の開発を並行して進めており,上述の研究結果を基盤として理論的結果が得られたことから,おおむね計画通り順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
再発事象の比較臨床試験を想定した盲検下例数再設計法の研究については,滞りなく受理されるよう論文改訂を進める.多変量再発事象の比較臨床試験を想定した例数設計法及び盲検下例数再設計法の開発については,動作特性を評価するシミュレーション実験を行い,論文投稿を目指す.さらに,抗がん剤開発の第I相用量探索試験を想定したセミパラメトリック用量探索デザインにおけるベイズ流平均化操作に基づく方法の開発を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
国内学会に参加するための旅費を計上していたが,COVID-19の影響により各学会がオンライン開催となったため使用しなかった.また,計上していた図書,英文校正費は未使用であり,今後の研究および論文執筆時に使用する予定である.
|