本研究では,耐侵入システムの振る舞いを確率点過程であるマルコフ再生過程(MRGP: Markov Regenerative Process)を用いてモデル化し,その正確な動作を定量的に評価した.システムの最適化においては,新しい感度分析理論を開発し,これを解析的手法と組み合わせることで,より効果的な設計が可能となった,また,モデルパラメータの感度分析を通じて,システムコンポーネントの重要度を評価する方法を探求した.さらに,深層学習の技術が進展する中,これをサイバーセキュリティへ応用する試みを行い,システムの安全性向上に貢献した.加えて,階層的モデリングを用いることで,多状態システムを活用し,性能評価のための新たな指標を計算する手法を提案した.このアプローチにより,システムの可用性およびセキュリティ性能の向上を目指す最適なパッチ適用戦略を策定することが可能となった.
この研究期間全体を通じて,耐侵入システムの最適なパッチ適用戦略を評価し,システムの可用性・機密性・完全性を維持するための技術を開発した.2021年度には,システムへのリクエストがマルコフ型到着過程に従う確率モデルを構築し,セキュリティ障害が発生するまでの時間分布を待ち行列理論を用いて解析した.また,システムの定常解析を行い,MRGPの定常解に対する感度分析を通じて,システムの信頼性に影響を与える主要なパラメータを特定した.2022年度では,プル型セキュリティパッチ管理方策の有効性を議論し,セミマルコフとLS変換を用いて耐侵入システムの区間信頼性の算出方法を提案した.
この一連の研究を通じて,耐侵入システムの理論的基盤を強化し,実際のセキュリティ環境での応用に向けた基盤を築くことができた.耐侵入システムの開発と評価における新しいアプローチを提供し,将来のセキュリティ技術の進化に貢献することを目指している.
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