研究課題/領域番号 |
21K17753
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岸本 誠也 日本大学, 理工学部, 助教 (90843053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電磁界解析 / 複合物理解析 / 電磁波 / 有限差分法 / FILT / マルチフィジックス / 時間領域 |
研究実績の概要 |
2022年度は①電磁界の逐次計算を行わず、特定の観測時間までの電磁界消費エネルギーを計算する方法と②表面プラズモンのモード分離を中心に検討を行った。これらのテーマに関する研究実績の概要は以下の通りである。 ①電磁界の逐次計算を行わず、特定の観測時間までの電磁界消費エネルギーを計算する方法:従来は時間的にパルス波となる電磁波を誘電体媒質に照射した際の吸収エネルギーなどは電磁界の時間発展を逐次計算、時間積分することで求めてきた。本年度は特定の観測時間までの消費エネルギーを逐次計算することなく、計算する方法を確立した。数値逆ラプラス変換(FILT : Fast inverse Laplace transform)法に基づき、複素平面上で定義される電磁界の畳み込み積分を効率的に計算する。本手法を用いて損失誘電体円柱の特定観測時間における吸収電力の分布が求められることを確認した。 ②表面プラズモンのモード分離:今後のプラズモンデバイス応用を検討するため、電磁界解析のみで表面プラズモンの特性について検討を行った。誘電体グレーティング装荷型プラズモン導波路の検討を行い、長距離・短距離伝搬モードの選択性が金属厚で調整が可能であることやグレーティング部を最適化設計することで長距離伝搬モードの伝搬損が改善できることを示した。また、クレッチマン配置型表面プラズモン励起構造を中心に、波数空間における電磁界の縦横成分分離を行うことで、短距離・長距離伝搬モードや局在型プラズモンの分離が可能になることを示した。これによりプラズモンデバイス設計において通常の電磁界成分以外からその性能や設計指針を考慮することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度においては、以下の得られた研究成果と取り組みにより、本研究は遅れていると判断する。 ①電磁界の逐次計算を行わず、特定の観測時間までの消費エネルギー等を扱う方法:当初の研究計画では2021年度で検証を完了する予定であったが、計算方法の検証、論文採録に時間を要した。このため、提案法を次の計画項目である熱―電磁界解析の検討などに発展させる過程に取り組むことができていない。 ②FILT法による熱および弾性波の数値シミュレーション方法に関する研究:FILT法を用いた熱伝導の数値シミュレーション方法について、熱輻射・熱拡散などの検討が進んでいない。また、FILT法を用いた弾性波の数値シミュレーション方法についても、気体中の弾性波である音波シミュレーションは確立できたが、固体中を伝搬する波については計算コードの作成中である。 ③熱―電磁界を錬成する方法:当初の予定では、2022年度中に項目①の方法と項目②を連成する検討を実施する予定であったが、項目①の遅れにより十分な検討が行えていない。 これらより本研究課題のベースとなる項目①は目標を達成できたが、項目②や複合物理解析における検討は遅れている。このため、総合的に現在までの達成度は遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、本研究の根幹である電磁界の逐次計算を行わず、特定の観測時間までの消費エネルギー等を扱う方法については検証を完了したため、以下の研究項目・計画に従い実施する。 ①FILT法による熱および弾性波の数値シミュレーション方法の確立 固体中を伝搬する弾性波について、FILT法を用いた数値シミュレーション方法を確立する。まずは複素周波数領域における弾性波伝搬の支配方程式を有限差分法で解く定式化と計算コード作成を行う。次にFILT法を適応することで時間領域の解が得られることを確認する。また従来法の数値シミュレーション方法計算コードが完成したため、これを検証用に用いることで提案法の有用性・有効性を明らかにする。 ②熱―電磁界を錬成する方法の確立 FILT法を用いた熱解析と電磁界解析を組み合わせた複合物理解析方法について検討を行う。検証が完了している熱解析と、電磁界の逐次計算を行わず特定の観測時間までの消費エネルギーを計算する方法を連成する。まずは電磁界解析で求めた消費エネルギーをジュール熱として熱解析に組み込む方法について検討を進める。特に影響が考えやすいパルス波応答をモチーフとして検証を行う。次に、温度分布から物質定数を変化させ電磁界に与える影響を解析に組み込む。第3段階として、それぞれの現象間の相互作用を組み込む間隔について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度、2022年度ともに計上していた研究成果の周知と情報収集のために計画していた国際会議への出張を感染症対策として取りやめたため、出張旅費分に差額が生じている。また論文投稿費と英文校閲費として計上していた予算についても、十分な研究成果に達せず、年間での論文投稿数が減少したことから差額が生じている。 次年度以降の予算使用計画として2022年度から投稿準備を行っている論文に対して、英文校閲費、論文投稿費を充てる。また、参加を見送ってきた国際会議の出張旅費および、所属研究室に在籍している研究協力者の学会発表における出張参加費として予算を使用予定である。
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