PC作業者の作業に対する集中度を低負荷かつ定量的に推定できれば、知的生産性の改善に向けての作業環境の改善や作業への適切な割り込みタイミングの推定といった介入が可能になることが考えられる。このとき、集中度を作業者が持つ認知資源のうち主作業に振り分けられる割合と考えると、二重課題時には注意の分配によって反応時間が増加するという認知心理学上の知見から、集中度低下時には認知判断時間が増加すると予想される。認知判断時間の増減を集中度の指標とするため、日常的な作業中に偏在し定型性の高い認知判断タスクである「黙読」と「文章入力」に着目し、作業者の視線運動と認知資源配分すなわち集中度との関係性を実験結果に基づきモデル化することで、集中度の推定を目指す。
初年度に黙読タスク中の視線運動について1)集中条件 2)主作業への阻害タスクあり条件 3)作業継続による疲労条件の3条件下における計測実験データを、次年度に入力を伴う校正タスク中においても同様の3条件下実験を実施し、得られたデータから構築した識別モデルを構築した。 黙読タスクについて個人内層化10分割交差検証では0.723 のF 値が得られた。また個人差標準化処理及び視線行動の類似度を用いた訓練データ選抜を適用することで、識別モデルの個人化を試み、個人化適用前の正解率0.422から最高で 0.637の精度向上という結果を確認した。 校正タスクについては同様の手法を用いた個人内層化10分割交差検証でF値0.708が得られたが、異なるタスク間での識別モデル適用については個人差標準化処理を適用した場合でもチャンスレートを上回る十分な精度に達しなかったことから、デバイス入力データの利用等も含め今後の課題とする。
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