研究課題/領域番号 |
21K17796
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田辺 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60847557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 牽引力錯覚 / ハプティクス / ヒューマンインタフェース / 生体情報工学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,牽引力錯覚の生理学的な機序の解明を最終目標とし,今年度は錯覚時における運動との関係を明らかにするために,牽引力錯覚を利用して,一定の運動を誘導できることを検証した.対象とした運動は,視覚障害者が白杖を用いて歩行する際に使用するタッチテクニックとした.タッチテクニックは,進行方向の1~2歩前の情報の収集や安全性の確保のために,身体の正中線を中心に左右均等に白杖を振り,地面をタッチする操作技術である.このとき,白杖の振り幅が重要とされている.そこで,牽引力錯覚を利用して白杖の振り幅を誘導する実験が実施された(N=12).牽引力錯覚を利用して振り幅を誘導する前と後で目標の振り幅との誤差を比較した結果,誤差が有意に低下することが確認された.つまり,牽引力錯覚を利用することで,特定の運動を誘導できることが明らかになった. また,次年度には,非対称振動刺激の感覚入力経路を明らかにするために,深部感覚障害の患者を対象とした実験を予定であり,実施に向けた準備をした.具体的には,共同で実験を実施する茨城県立医療大学の研究チームと実験計画を議論し,感覚特性の評価システムと運動特性の評価システムを開発した.感覚特性の評価システムでは,方向弁別課題によって,錯覚時の感覚特性を評価する.運動特性の評価システムでは,今年度の成果の1つである牽引力錯覚を利用した運動の誘導技術を応用し,リーチングタスクの最中に牽引力錯覚を使って目標位置まで上肢を誘導する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,感覚特性・運動特性のデータを活用した生体情報工学的アプローチによって牽引力錯覚の機序解明に迫ることを目指しており,今年度は錯覚時の運動特性のデータを収集することができた.また,得られた知見をまとめた論文がIEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering誌に掲載されており,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度開発した実験システムを用いて,健常者や深部感覚障害の患者を対象とした錯覚の評価を行う予定である.そして,それぞれの参加者の錯覚の特性の差異から錯覚に寄与する感覚器を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の拡大の影響で予定した出張が中止になった.以上の理由により,当初の計画より使用額が小さくなった.
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