研究課題
本研究は、認識の変化を形式的に扱う論理である動的認識論理を用いて、これの発展体系として嘘や誤情報といった不確かな情報を形式的に扱うことを目的としている。この目的は動的認識論理の証明論に基づく定理自動証明器を用いて遂行される。そのため昨年度において動的認識論理のツリーシーケント計算と呼ばれる特殊なシーケント計算を構築し、これがクリプキ意味論において健全かつ完全であることを証明した。また、これがカット除去定理が証明可能であり、さらに決定可能であることも証明した。この結果にさらに内容の拡充を行って国際学会に投稿予定である。また、この嘘や誤情報を含む論理の応用用途として現実の議論を扱う可能性を考察している。日常における議論は形式論理とは異なるものであるが、それをグラフ構造を用いて形式化する試みがなされている。Argumentation Frameworkという分野がそれであるが、ここにおいて論証を正当化するために必要な負担ないし労力という観点に着目した。ある主張を相手に認めさせ当化するために全体としてどれだけの負担を強いられるのかもしくは、反論するために複数の議論の展開があるときにどの展開を辿るのが負担が少ないのかという点に関して、「主張と反論の連鎖の長さ」、また、「論証をサポートするための証拠提出の難易度」 という”情報の整合性”に関わる2つの要素に着目してこの負担を計算し明示的に表現する方法を考案した。これは第120回人工知能基本問題研究会(FPAI)に投稿し発表した。加えて、この論理を用いて歴史記述の扱いを考察している。機械学習を用いた歴史文章の生成が今後行われていくと考えられるが、そこにフェイクニュースを含まぬように嘘・誤情報を探知する必要がある。それらの応用用途のために歴史文章生成について考察して2021年の応用哲学会で発表した。
2: おおむね順調に進展している
嘘・誤情報の形式化およびそれらの自動探知の要となるの証明系の構築、及び、定理自動証明に必要な定理の証明は完了した。この結果に基づくことで動的認識論理の証明系を計算機上で実装することができ、嘘探知の実験を行うことができる。
嘘・誤情報を含む動的認識論理の証明系を計算機上で実装する。そして、人狼の人工知能の競技用プラットフォーム上でこの論理を実装することで人狼ゲームを用いて嘘探知の実用性を実験する。
すべて 2022 2021
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人工知能学 会第120 回人工知能基本問題研究会(SIG-FPAI)議事録
巻: 1 ページ: 12-18
The Proceedings of Fifteen International Workshop on Juris-informatics (JURISIN2021),
巻: 1 ページ: 9-17