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2021 年度 実施状況報告書

報酬信号を考慮したスパイキングニューロン用学習モデルの提案とそのハードウェア実装

研究課題

研究課題/領域番号 21K17818
研究機関東北大学

研究代表者

守谷 哲  東北大学, 電気通信研究所, 学術研究員 (10898117)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワード神経回路モデル / STDP / 脳型計算 / 学習 / アナログ回路 / 脳型コンピュータ
研究実績の概要

低消費電力性に加えて耐障害性や可拡張性を兼ね備えた情報処理システムの実現を目標として,神経細胞が生じるスパイクなどの局所情報から効率的に学習を行うための学習モデルの開発を行っている.神経スパイクのタイミングに依存して細胞間の結合重みが変化するスパイクタイミング依存可塑性(STDP)という現象に着目し,この機能を実現するアナログ回路について設計した.アナログ回路は21個のトランジスタから構成され,結合重みの変化量に相当する電圧を出力する.実細胞のSTDPの結合重みの変化と同様に,出力電圧が神経スパイクの時間差に対して指数関数的に変化することを計算機シミュレーションから確認した.更に,現在の結合重みによって結合重みの変化量が変わる荷重値依存性の効果や,学習において重要度が低い細胞間の結合を減弱させる効果についても同回路上に実現した.これらの効果はSTDPを利用した学習において学習性能を向上させることが報告されており,より効率的な学習則の実現に寄与する.これに加えて,数百ニューロン程度からなるスパイキングニューラルネットワークの活動をシミュレーションするためのプログラムを作成した.既にネットワーク動作の検証は完了しており,外部入力に対してネットワーク構造を反映したダイナミクスが発現することを確認した.さらに,このネットワークに音声信号を入力した際に分類する課題を行い,信号が弁別できることを確かめた.現在はSTDPを含め,スパイクを活用した学習則のネットワークレベルでの実装について進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

STDP則を実現するアナログ回路設計は当初の研究計画に無かったものであり,デジタル回路よりも更に効率的に学習を実現しうる専用ハードウェアの開発に繋がる.またこの結果はトランジスタの物理的な特性を活用した効率的な学習則に関する知見を与えるものである.また,スパイキングニューラルネットワークのシミュレーション環境に関しても構築済みで,ネットワーク動作を確認している.これらのネットワークをリザバーコンピューティングにおけるリザバー層として利用し,リッジ回帰などの既存の学習則で音声信号が弁別できることを確認した.一方で,局所的な情報を用いた独自の学習則については現在アルゴリズムやパラメータを調整している段階であり,検証を進めている.その為,進捗状況を(2)概ね順調に進展しているとした.

今後の研究の推進方策

まずは学習則についてアルゴリズムやパラメータの調整を完了し,その後は当初の計画通り,計算機シミュレーション上に構築したスパイキングニューラルネットワークおよび学習機構を実現するための専用デジタルハードウェアの構成を検討する.ハードウェア実装に際し乗算など計算リソースが大きい演算の実行が課題となるが,メモリテーブルやシフト演算等を活用することで対応する.また提案したハードウェア構成をもとに提案アルゴリズムをFPGA上に実装し,その回路規模,及び音声認識課題を実行した際の性能・消費電力について評価を行う.従来アルゴリズムを用いてCPU上でソフトウェア的に情報処理を実行した場合と計算速度や消費電力について比較し.モデルの有効性を評価する.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)

  • [国際共同研究] Polytechnic University of Catalonia(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      Polytechnic University of Catalonia
  • [雑誌論文] Analog-circuit implementation of multiplicative spike-timing-dependent plasticity with linear decay2021

    • 著者名/発表者名
      Moriya Satoshi、Kato Tatsuki、Oguchi Daisuke、Yamamoto Hideaki、Sato Shigeo、Yuminaka Yasushi、Horio Yoshihiko、Madrenas Jordi
    • 雑誌名

      Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE

      巻: 12 ページ: 685~694

    • DOI

      10.1587/nolta.12.685

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 減衰付きSTDP学習則のアナログ回路設計とLSI実装2022

    • 著者名/発表者名
      守谷 哲,加藤 達暉,弓仲 康史,山本 英明,佐藤 茂雄,堀尾 喜彦
    • 学会等名
      電子情報通信学会 ニューロコンピューティング(NC)研究会
  • [学会発表] ニューロン回路への応用を目的としたアナログCMOS多数決回路の設計2022

    • 著者名/発表者名
      小野 哲史,守谷 哲,菅家 由佳,山本 英明,弓仲 康史,佐藤 茂雄
    • 学会等名
      電子情報通信学会 ニューロコンピューティング(NC)研究会
  • [学会発表] Analog Hardware Implementation of Spiking Neural Networks2021

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Moriya
    • 学会等名
      MIRAI 2.0 R&I Week 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] A Subthreshold Spiking Neuron Circuit Based on the Izhikevich Model2021

    • 著者名/発表者名
      Shigeo Sato, Satoshi Moriya, Yuka Kanke, Hideaki Yamamoto, Yoshihiko Horio, Yasushi Yuminaka, Jordi Madrenas,
    • 学会等名
      30th International Conference on Artificial Neural Networks
    • 国際学会
  • [学会発表] An Investigation of the Relationship between Numerical Precision and Performance of Q-Learning for Hardware Implementation2021

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Oguchi, Satoshi Moriya, Hideaki Yamamoto, Shigeo Sato
    • 学会等名
      The 2021 Nonlinear Science Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] リザバー計算に基づく人工神経細胞回路のパターン分類特性の評価2021

    • 著者名/発表者名
      住 拓磨,山本 英明,守谷 哲,竹室 汰貴,金野 智浩,佐藤 茂雄,平野 愛弓
    • 学会等名
      第31回 日本神経回路学会全国大会
  • [学会発表] リカレントニューラルネットワークの固有値分布における対称性解析2021

    • 著者名/発表者名
      藤本 ありさ,山本 英明,守谷 哲,佐藤 茂雄
    • 学会等名
      第31回 日本神経回路学会全国大会
  • [学会発表] FPGA実装に向けた強化学習モデルの丸め誤差と学習性能に関する考察2021

    • 著者名/発表者名
      小口 大輔,守谷 哲,山本 英明,佐藤 茂雄
    • 学会等名
      電子情報通信学会 ニューロコンピューティング(NC)研究会

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公開日: 2022-12-28  

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