研究実績の概要 |
選好に基づく進化型多目的最適化手法の自動アルゴリズム構成という最終的な目標に向けて, 本年度は次の研究に取り組んだ.
[既存の選好に基づく進化型多目的最適化手法のアルゴリズム要素の解析・分解] 本成果により, 既存手法のアルゴリズム要素を自動アルゴリズム構成に利用可能にした. 解析の結果, いくつかの手法 (例えばg-NSGA-II) は元のアルゴリズム設計に不備があり, 分解要素を利用しても自動アルゴリズム構成には貢献できないことが判明したため, 除外することとした. [参照点が非負な値を取った場合における, 選好に基づく進化型多目的最適化手法の解析] 参照点が非負な値に設定された際, いくつかの手法 (例えばR-NSGA-II) が病的な振る舞いを示すことが先行研究にて報告されているが, 原因は不明であった. 実応用においてこのような状況は頻出するため, 選好に基づく進化型多目的最適化の応用のためにも原因を明らかにする必要があった. 本研究では実験的解析によりこの原因を明らかにした. [ベジエ単体を用いた多目的最適化の枠組みの開発] 目的関数の計算コストが高いため, 解評価回数が制限されるcomputationally expensive多目的最適化に対する効果的な枠組みを開発した. 本枠組みは2つの探索フェーズに分かれる. 最初のフェーズでは数理最適化ソルバーを用いて極少数のパレート最適解を近似する. 次のフェーズではベジエ単体を用いて, 得られた近似解集合を補間するような解集合を生成する. 特定の問題クラスにて, いくつかのstate-of-the-artな多目的最適化手法よりも本枠組みが有用であることを確認した. 本研究成果は進化計算分野トップ国際会議の1つであるACM GECCO2022にてフルペーパー論文として採択されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動アルゴリズム構成の基盤となる既存の進化型多目的最適化手法のアルゴリズム要素の分解は, 当初の計画どおりの進捗である. 選好情報を導入可能な新しい多目的最適化の枠組みの実現にも成功している. また, 本研究分野では未解決課題であった, 非負な参照点を使用した際の特定の手法の病的な挙動の原因を明らかにすることができている. 一方, 本研究を遂行する上での障害となっていた, この原因の解析に取り組んだ分, 自動アルゴリズム構成そのものへの着手は当初の計画よりもわずかに遅れている. これら本年度の研究成果を総合的に踏まえ, 本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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