研究実績の概要 |
本研究では、極端現象に対して力学系理論の立場からアプローチし、バーストメカニズムの振る舞いを反映した低次元力学系を活用した、少量データを前提とした極端現象の新しい予測方法論の開拓を目的としている。 2022年度は、2021年度に導出したバーストメカニズムのひとつであるホモクリニック軌道の近傍に普遍的に埋め込まれているPacifico-Rovella-Viannaの2次元無限峰写像力学系(以下、PRV写像)の理解に取り組むとともに、具体的な極端現象(気象系)の数理モデルのシミュレーションを開始した。また、機械学習的アプローチの要素を取り入れる検討も開始した。 (1) PRV写像のAP写像近似の導出:PRV写像を散逸性を表すパラメータで展開することで、Nakagawa, JPSJ, 2015で解析が完了しているAP写像を第0近似とする摂動展開式を暫定的に導出した。この導出の狙いは、既知のAP写像の知識からPRV写像の振る舞いを理解することである。但し、この導出は現在のところ非常に大雑把なもので、妥当な導出であるかどうか今後検証が必要である。 (2) エルニーニョ・南方振動(ENSO)のシミュレーション:ENSOの数理モデル(Timmermann, Geophys. Res. Lett., 2002; Timmermann et al., J. Atomos. Sci., 2003)は、取り扱いが非常に容易にも関わらず現象との対応も悪くないため、取り掛かりの具体例として最適と考えた。現在、この数理モデルに対するRay et al., PRE, 2020の数値結果(定常分布とラミナー継続時間分布)の追試を行っている。 (3) 機械学習的アプローチを取り入れる検討:今後取り入れる可能性のある技術について、Ash et al., Chaos, 2022を基に調査を開始した。
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