研究課題/領域番号 |
21K17826
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
原田 智広 東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (40755518)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 進化計算 / 機械学習 / 最適化 / サロゲート |
研究実績の概要 |
本研究では,最適化手法の一つである進化的アルゴリズム(EA)に2つの解の優劣を判定する二値分類型のサロゲート(代理評価)モデルを組み込み,最適化に要する計算時間を削減する手法の確立を目的とする.この目的達成に向け,2021年度はEAのための新しい二値分類型サロゲートモデルとして,ニューラルネットワークの1種であるExtreme Learning Machine(ELM)と,文書検索に用いられるランク学習手法であるDirectRankerを組み合わせたExtreme Learning Machine-based DirectRanker(ELDR)を考案した.ELDRをサロゲートとして用いるEAを提案し,無制約単目的最適化ベンチマーク問題と制約付き単目的最適化ベンチマーク問題を用いる計算機実験を実施した. まず,無制約単目的最適化問題では,既存のサロゲート型EAの最新手法と比較して提案手法が有意に優れる性能を示すことを明らかにした.特に,設計変数の次元数が多い高次元問題において従来手法を大きく上回る探索性能を有することを示した. 次に,制約付き単目的最適化問題では,目的関数だけでなく制約条件も考慮した優劣関係をELDRを用いて推定し,評価の改善が見込まれる有望解のみを評価する手法を提案した.ELDRを用いないEAと比較する実験の結果,ELDRを援用することで少ない評価回数で制約条件を満たす実行可能解を発見し,かつ目的関数を改善できることを示した. 本研究成果をまとめた研究発表に対し,IEEE Computational Intelligence Society Young Researcher Award (Symposium on Evolutionary Computation)を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,初年度に「既知解の組み合わせを学習データとする分類モデルを用いた有望解探索法」の確立をサブテーマとして設定した.この計画に対し,2021年度は二値分類型のサロゲートモデルであるELDRを考案し,そのモデルを組み込んだ進化計算法を確立した.また,提案手法の有効性を最適化ベンチマーク問題を用いた計算機実験によって検証し,サロゲート型EAの最新手法と比較して優れた性能を有することを確認した. これらの研究成果により,当初予定していたサブテーマを達成したため,本研究課題は概ね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,申請書に記載された計画をすすめることを基本とする.具体的には,2年度目の研究では,当初計画した「分類モデルを用いる局所探索による実行可能解生成」の確立に向け,ELDRの特徴を考慮した局所探索法を探求する.具体的には,制約付き最適化問題において実行可能解を早期に発見するために,実評価時に制約条件を満たさない解(実行不可能解)に対して,ELDRに基づく近傍探索機構を導入し,実行可能解を発見可能にする. 上記の計画に加え,初年度の研究ではベンチマーク問題を用いた計算機実験による検証にとどまったのに対し,2年度目には実世界の最適化問題を対象とした性能検証に取り組む.具体的には,マツダ株式会社が提供する複数車種の同時最適化問題や,日立製作所が提供する風力発電用風車の設計最適化問題など,一般に公開されている実世界の最適化問題を対象とし,初年度に提案した手法の有効性を検証する. さらに,初年度に提案した手法は目的関数が一つの単目的最適化問題のみを対象としたが,2年度目には複数の目的関数を同時に考慮する多目的最適化問題を対象とした手法への拡張に取り組む.実問題は複数の相反する目的を同時に考慮する問題がほとんどであり,多目的化への拡張は重要である.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた出張が新型コロナウイルスの影響で中止になったため,令和4年度の出張費として使用する予定である.
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