研究課題/領域番号 |
21K17836
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古川 淳一朗 国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, 研究員 (50721619)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アシストロボット / 運動推定 / 生体信号 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、状況に応じた適切な動作へと導くアシストロボット制御手法の構築を目指す。本年度は、装着者から計測される筋活動と関節運動の情報に基づき、意図した動作に合わせた適切な制御則により駆動させるアルゴリズムを開発した。一般的に、動作意図を推定するには、あらかじめ支援対象となる動作についてラベル付けしたデータに基づき学習された推定器を利用する。そのため、装着者はあらかじめ設定した動作のいずれかを行うことが前提になっている。しかし、対象動作のまわりには紛らわしい動作が多々潜在している。従来の方法では、支援対象ではない動作を行った場合にアシストロボットが支援対象とみなし作動してしまう可能性あった。一方で、ヒトの動作データ全てに正確なラベル付けをすることは困難となる。そこで、ヒトの動作意図を検出するために、Positive and Unlabeled Learningと呼ばれる機械学習技術を援用した。支援対象動作とそれに関連する紛らわしい動作データを取得し、その一部に支援対象となるポジティブラベルを付け、他のデータに対してはラベルを付けないで学習させることで推定器を作成した。これにより、動作意図がポジティブと推定された場合は、支援対象動作に対する制御則で駆動させ、ポジティブでないと推定された場合は装着者の動きを妨げない制御則で駆動させる選択的支援アルゴリズムを提案した。支援対象動作に対する制御則は最適制御技術により導出した。提案方法は被験者協力のもと、アシストロボットを用いて有効性を検証した。実験設定では、支援対象は椅子からの「立ち上がり」動作とし、その他に「脚を組む」「少し離れた物に手を伸ばしてとる」「座りなおす」の動作が起こり得る状況を想定した。その結果、従来手法と比較して精度よく対象動作を支援でき、提案方法の有効性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究の目的を達成するために必要な機能の一部である制御アルゴリズムを提案し、実機を用いて有効性を検証した。従来方法と精度を比較することで有効性も確認できた。以上の結果より、本年度の計画は順調に進展していると考えられる。しかし、流行している感染症の影響もあり、被験者協力による実験が思うように進められなかった部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
ある状況における人の行動の多様性や特徴を捉えるために、より多くのヒトの動作データ取得を目指し特徴量抽出方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
流行している感染症の影響もあり出張や被験者実験が困難であったため、当初予定していた情報収集のための旅費や被験者協力による実験の謝金分を次年度に繰り越すこととした。次年度では、感染症の状況が改善していればより多くの被験者協力のもとデータを計測する予定である。その際、謝金およびデータ取得のセンサ類に必要な消耗品に充てる予定である。
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