障害者権利条約への批准に伴い,障害の有無によらずモノやサービスにアクセスしやすい環境の整備が進められている.こうした中,視覚障害者の情報アクセスや学習活動,QOL向上のためのツールとして,タブレットなどのタッチパネルを搭載した情報端末が広く活用されるようになった.とくに,外界からの情報取得に制限のある全盲の視覚障害者にとってスマートフォンやタブレットは,音声読み上げ機能などを活用して幅広い情報に主体的にアクセスできるツールとしてなくてはならないものとなっている.しかし,タッチパネルは視覚依存性が高いため,触運動の学習や空間認識能力が十分に育まれていない全盲児がこれからICT活用をはじめようとする際に,指をまっすぐに動かせなかったり,力が入り過ぎたりするなどの理由で意図した操作ができないという問題が挙げられている.そこで本研究では,全盲児のタブレット操作に対する適切な触運動の獲得を支援する基礎研究の位置づけとして,視覚を活用できない場合の指先の触運動特性に関する知見を収集することを目的とした.最終年度である2023年度は,視覚を遮蔽した晴眼者を対象として,非視覚環境下での指先の触運動特性の評価を実施した.タブレット上での指先の検出位置座標の分析や,モーションキャプチャによる指先の運動解析を行い,視覚が遮蔽された条件下でタップやドラッグなどのタブレットの基本操作に伴う手指運動の特性を調べた.その結果,視覚活用の有無によってタップの正確性やドラッグの軌跡といった基本操作に伴う指先の運動特性に違いがみられることがわかった.
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