• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

転写酵素の遺伝子間動態に基づく細胞分化モデルの構築と実データによる検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K17851
研究機関福井大学

研究代表者

梶田 真司  福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (40804191)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード転写 / 時間遅れ微分方程式 / パターン形成 / 数理モデル / 確率微分方程式
研究実績の概要

本年度は遺伝子上の転写酵素の移動を考慮した遺伝子発現モデルの開発を前年度に引き続き進めた(関係する学会発表1件)。昨年度構築したモデルの研究に加えて、本年度は新たに3つのモデルの構築を行なった。1つ目は、転写酵素が遺伝子上を移動するのにかかる時間を考慮した時間遅れ微分方程式による遺伝子発現のモデルである。近年の転写研究で明らかになった細胞現象をモデルに組み込むことで、転写バースティングと力学系理論における分岐現象の関係性を示唆するシミュレーション結果が得られた。2つ目は、単一遺伝子上の転写酵素の移動を表すモデルである。実験系の共同研究者と共に、転写酵素の化学修飾の効果を解析するためのよりミクロスコピックなモデルの構築を進めている。3つ目として、細胞が環境に応じてどの遺伝子を発現させるべきかの意思決定を行う際に重要な、転写制御因子が認識する遺伝子配列の特異性に関するモデルの構築も行なった(関係する学会発表1件)。

さらに、本研究で取り組んだ数理的手法をより一般化させ、1次元空間を確率微分方程式に従ってランダムに動く粒子が、粒子間の直接的な相互作用はないにも関わらず、粒子が生成する濃度場を介して相互作用することで等間隔に粒子が並ぶという新たなパターン形成の数理モデルを構築した(関係する学会発表1件、論文投稿準備中)。1次元空間における複数粒子の協働現象という点で転写酵素ダイナミクスの数理モデルとは密接な関係があり、今後それらの関係性の調査を進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は新たに複数のモデルを構築した。具体的には分岐理論やパターン形成との関連など理論的な解析を重視したモデルに加え、実験系の共同研究者と遺伝学的・生化学的な理解の向上を目指したモデルの構築も行なった。これにより、理論と実験の両面で理解が進みつつある。また研究発表としては3件の学会発表を行い、うち1件は論文投稿準備中である。以上より、本年度の研究は概ね順調に進展していると評価している。

今後の研究の推進方策

これまでに構築した数理モデルの改良やより詳細な数値シミュレーションと理論解析を進めていく。またこれまでに構築したモデルは比較的少ない遺伝子数を扱ったモデルであることから、細胞分化を意識したモデルとして今後はより多数の遺伝子数を扱ったモデルへの拡張を検討していく。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により予定していた国際会議や国内会議の参加が困難、またはオンライン開催になったため、旅費に余剰が生じた。研究の進展への影響は出ていない。徐々に現地開催の学会は増えており、今後は成果発表に関わる予算の支出が増える計画である。また今後計算機の購入や論文投稿に伴う支出を計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Entropic forceに基づく細胞内オルガネラの移動2023

    • 著者名/発表者名
      梶田 真司, 畠山 哲央
    • 学会等名
      日本物理学会 2023年春季大会
  • [学会発表] 生命医科学分野における数理・データサイエンス研究の始め方2022

    • 著者名/発表者名
      梶田 真司
    • 学会等名
      日本遺伝学会第94回大会
  • [学会発表] 転写制御因子の配列特異性の理解に向けた化学反応モデルの構築2022

    • 著者名/発表者名
      愛知 慶大, 梶田 真司
    • 学会等名
      定量生物学の会 第十回年会
  • [学会発表] 空間を考慮した転写ダイナミクスの数理モデリング2022

    • 著者名/発表者名
      梶田 真司
    • 学会等名
      定量生物学の会 第十回年会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi