研究課題
本研究の目的は、がんゲノム医療において遺伝性疾患の絞り込みの実態を明らかにすること、および、がん遺伝子パネル検査で検出された「腫瘍ゲノム情報から生殖細胞系列病的バリアントが疑われるバリアント(Presumed Germline Pathogenic Variant:PGPV)」のデータベースを構築することである。令和4年度は、前年度に続き、がん遺伝子パネル検査結果からバリアント情報を抽出するプログラムを用い、がんゲノム医療中核拠点病院である岡山大学病院およびがんゲノム医療拠点病院である国立病院機構四国がんセンターにおけるPGPVを収集しデータベース化を行った。2015年12月1日から2021年11月までの期間に、岡山大学病院および四国がんセンターでがん遺伝子パネル検査を実施した患者はそれぞれ920例、159例(計1079例)であった。このうちPGPVが検出されたのはそれぞれ59例(6.5%)、16例(10%)であった。PGPV検出例における遺伝カウンセリング実施状況については調査中である。これまで、四国がんセンターでは、PGPVが検出されたのは16例(10%)では遺伝カウンセリングの受診率は7/16(43%)と低く、遺伝性疾患の確定診断のための検査(遺伝学的検査)を受検したのは7/16(43%)であった。PGPV検出16例のうち遺伝カウンセリングを受診しなかった患者では、その理由として、全身状態不良あるいは結果説明前の死亡、あるいは患者自身が遺伝情報を知ることに興味がないことが挙げられた。この結果から、PGPVが認められた患者の遺伝カウンセリング受診率を改善させるためには、がん遺伝子パネル検査の結果開示から遺伝カウンセリング受診までのアクセスの円滑化や患者への遺伝に関する教育が重要であることが示唆された。
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Acta Med Okayama
巻: 76 ページ: 673-678
10.18926/AMO/64117