肺がんの個別化医療の実現を目指した研究を行った。具体的には、免疫チェックポイント阻害薬に対する応答性をトランスクリプトームデータ等から事前に予測することを試みた。
免疫チェックポイント阻害剤、特にPD-1/PD-L1遮断は、がん治療に革命をもたらし、そうでなければ予後が限られていたであろう患者さんに多大な利益をもたらした。それにもかかわらず、免疫療法に反応する患者はごく一部であり、免疫チェックポイント阻害剤のコストや副作用を無視することはできない。機械学習や深層学習の登場により、臨床データや遺伝子データを用いて、免疫療法に対する患者の反応を層別化することができるようになった。残念ながら、これらのアプローチは一般的に、その予測を説明できない「ブラックボックス」な手法であり、責任ある臨床応用を妨げてきた。そこで、我々は、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する免疫療法の反応性を正確に、かつ解釈可能に予測する「ホワイトボックス型」ベイジアンネットワークモデルを開発した。
我々が本プロジェクトで開発したTANモデルは、持続的な臨床効果を正確に予測し、予後が異なる2つの臨床的に重要なサブグループを区別することができた。さらに、我々の最先端のホワイトボックスTANアプローチは、従来の方法よりも高い精度を達成した。我々は、このモデルが臨床医が免疫療法を本当に必要とするNSCLC患者を選択する際の指針となり、またこのアプローチが他の種類のがんにも容易に適用できることを期待している。
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