研究課題/領域番号 |
21K17863
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷口 雄太 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 助教 (20747125)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | プログラミング学習 / 学習活動分析 / 時系列解析 / 可視化 / システム連携 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、個別の学習者の学習体験が埋没しがちであり、オンライン授業の増加により一層その傾向が強まっているという問題に対し、学習者間の情報交換の活性化により、学習者の主体的な学習を支援し、クラス全体の学習効果を高めることを目的としている。本年度は学習者のプログラミング活動履歴の可視化手法、および学習環境の最適化手法に係る研究開発を行った。 プログラミング授業において教師が学習者の学習状況を把握する方法としては、従来から教室における見回りが行われてきた。しかし、見回りによって可能なのは学習者がその時点で何を書いているか確認したり、その時点での疑問点の解消を支援することに限られている。つまり学習状況の連続的な時間変化について把握することは難しかった。そこで、学習者の状況の時間発展を視覚的に把握できる可視化手法の開発を行った。この手法を用いて、教師はクラス全体の状況を素早く確認することができるほか、申請者が研究開発においてデータに対する理解を深めることができる。 また、本研究では動的な学習環境の最適化を考えているが、従来の学習環境は独立した学習支援システムを個別に利用する形となっており、それらを任意に組み合わせて連携させることができない。学習支援環境同士をデータ連携させたり、協調動作させることができなければ、動的に学習環境を最適化することは困難である。そこで、学習環境を任意に組み合わせる手法の最初の段階として、視覚的に学習環境を組み合わせる手法の研究開発を行った。これにより教師は授業に必要な学習支援環境を複数組み合わせることができる。また、オンライン授業における情報交換支援のために、リアルタイムでチャットを行える機能や、自身の理解度を表明する機能などを備えることにより、学習者からの自発的なコミュニケーションが可能となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において学習者全員の学習状況の時間的変化を把握することは最も重要なマイルストーンとして位置付けられる。時間的変化が分からなければ、学習者のスキルを推定したり、課題やつまずきの難しさを把握することは困難である。今年度は最初のステップとして時間的変化を視覚的に理解できるようにしたことにより、教師や学習者が学習状況を把握するための最低限の手段を確保できたと言える。また、学習環境を動的に最適化することが本研究の目的の1つとなっているが、学習環境を視覚的に組み合わせる手法を開発できたことはその目的の最初の段階を実現したと言える。以上の結果は既に国内外で論文発表が終わっている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は学習状況の時間的変化の中から重要なパターンを抽出する問題に取り組む。これにより機械的な状況把握と支援が可能となり、可視化に基づいて人間が判断する必要をなくすことができる。また、学習環境の視覚的組み合わせに加えて、データの動的連携を実現するための研究開発に取り組む。これにより、様々な学習支援システム間で協調動作が可能になり、本研究が目標とする学習環境の動的最適化へと繋がる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はCOVID-19により海外渡航を行うことができなかったため、繰り越しが生じた。次年度は繰り越し分を次年度分と合わせてシステムの強化等に充てる。
|