研究課題/領域番号 |
21K17870
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
小野 淳平 青森大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (00880759)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 物語生成 / 物語論 / 認知科学 / 驚き / テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG) |
研究実績の概要 |
代表研究者は、1.物語自動生成ゲームの拡張、2.ストーリー生成のための知識ベースの拡張を行った。これらは当初計画において課題としていた事柄である。その二つの試みに関する成果を以下にまとめる。特に2が主たる成果である。 1.2021年度に提案及び試作を行った「ストーリー生成機構を内包したストーリー」について、より具体的知識を用いた生成を試みた。このモデルは、アナログゲームであるテーブルトークロールプレイングゲームにおけるゲームマスター(ゲーム進行役を担う人物)とプレイヤー(ゲームを体験する人物)の関係を示すモデルである。特に2022年度は、ストーリー全体を生成する生成主体(作者)が作り出すストーリーに対して、そのストーリーの登場人物として振る舞いつつも生成主体が目指すストーリーを大きく変化させていくアプローチを試みた。 2.2021年度において開発を進めた、昔話などの物語の構造に関する知識ベース並びに語の概念に関する研究に基づく概念辞書(オントロジー)の開発について、より具体的に進めている。前者については大まかに作成していた知識ベースの構造を整理し、後者については物語を修飾する形容詞や形容動詞について開発を進めている。これは生成されるストーリーの種類の拡張にアプローチすることを意図している。また現実において展開されるストーリーを分析することで、物語を修辞する技法における「説明」のための知識を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度においては、研究代表者は自身が開発した物語自動生成ゲームにおいて、システムそのもの拡張とストーリー生成に利用する知識ベースの拡張を試みた。特に2022年度は物語生成に用いる知識の構築を中心に研究を進めており、その点については一定の成果を挙げることができた。一方で、物語自動生成ゲーム自体については2021年度に対してその進捗が遅いと言わざる負えない。以上を理由として、現在までの進捗状況を、「(3) やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度において、大規模言語モデル (LLM) による文章生成が大きな注目を集め、また近年のニューラルネットワークによる機械学習的アプローチに基づくストーリー生成がLLMに合流し成果を挙げている。一方で代表研究者は、物語自動生成ゲーム第二版の開発を目標とし、記号処理を主たる方法として物語生成を試みている。2021年度の物語生成に関するサーベイ報告においては、機械学習の手法だけでなく他手法とのハイブリッド手法を今後の展開として示しており、代表研究者もまた記号処理的手法と機械学習的手法をハイブリットした手法を試みる。 また、当初予定においては、物語自動生成ゲームの評価方法の検討を予定していた。2023年度はその方針を維持しつつ、進捗の遅れがみられる開発を重視するとともに、既存の評価手法の調査を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度においては、校閲費用、雑誌投稿費用、学会参加費用、書籍費用、物品費用が主たる費用である。特に,成果発表において、国際会議並びに、SCOPUSなどにインデックスされたジャーナルへの投稿を行う上で、校閲費用が必要となる。雑誌投稿費用、学会参加費用もまた同様である。 また、書籍費用、物品費用についていえば、円滑な研究を進めるうえで必要となる。書籍費用は、物語に関する研究資料の収集に利用し、物品費用は、消耗品の購入の他、今後、研究成果に基づいて実装するシステム並びに研究成果を管理するための電子機器を購入する予定である。
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