研究課題/領域番号 |
21K17870
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
小野 淳平 青森大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (00880759)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 物語生成 / 物語論 / 認知科学 / 驚き / テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG) |
研究実績の概要 |
2023年度の本研究においては、以下の二つの事柄を行った。 (1)物語生成に利用する知識ベースの拡張、特に物語の概念に関する研究に基づく概念辞書(オントロジー)の開発を進めつつ、それらを利用した物語の修辞技法の開発を行った。ただし、以下の「現在までの進捗状況」等でも示すが、その成果の一部を示す論文の進捗に遅れがあり、関連する成果の一部は、2024年度報告に持ち越される。また、2022年より目覚ましい進捗が報告されている生成AIについて、コンテンツ生成という側面の関連性から注目し、日本の古典的な物語を題材として、複数の文章生成AIサービスにおける出力結果の比較を試みた。「今後の研究の推進方策」でも述べるように、この成果の延長線上で、生成AIと記号処理のハイブリッド手法を検討したい。 (2)研究課題の応用として、ロシア・ウクライナ戦争と関連して、ソーシャルネットワークサービス(SNS)上で展開するフェイクニュースに関する一連の展開を題材とする。それらのフェイクニュースは、人間が物語を語る機能と関連すると考えたためである。2018年に、ケンブリッジ大学の研究者はフェイクニュースの流布をゲーム形式で体験させることで、フェイクニュースに対する心理的な免疫を与えることを目的とした研究を試みており、ここで報告する成果はその研究を引用する。本研究で提案したゲームシステムは、フェイクニュースを含む偽情報を拡散する立場にプレイヤーを置き、攻撃対象となる集団の意思決定を歪めることを目標とする。なお、ここで取り扱う偽情報はウクライナ政府が公表していた偽情報のリストに基づく(現在は非公開)。現在は試作段階であり、今後はシミュレーションする集団の規模を拡張する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、ストーリー生成に利用する知識ベースの拡張を進めつつ、物語自動生成ゲームの開発において、応用的側面の検討を行った。応用的側面の検討については、フェイクニュースを含む偽情報という問題に関わっており、人間の物語を語るという機能に関わるものと見做しており、その成果を本研究課題における物語自動生成ゲームの基盤にフィードバックする予定である。成果報告における論文誌投稿は進捗の遅れがあり、少なくとも2件の投稿については、2024年度に持ち越しとなった。 以上を理由として、現在までの進捗状況を、「おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年において対話型の文章生成AI『ChatGPT』やText-to-Image型の画像生成AI『Midjourney』といった生成AIによるシステムの公開とそれに続くニューラルネットワークによる機械学習を用いたコンテンツ生成は世間に大きな影響を与えており、それらの文章生成AIや画像生成AIなどを利用した物語生成の研究もまた盛り上がっている。 本研究課題の方針としては、物語自動生成ゲームにおいて、記号処理を主たる方法とした生成によりコンテンツのマクロな枠組みを作りつつ、上記の生成AIによりコンテンツのミクロな部分を作りこんでいくハイブリッド手法を今後の展望に置く。また、応用的側面の検討として進めている、フェイクニュースを含む偽情報を扱ったゲームについては、本研究課題における物語自動生成ゲームの基盤へのフィードバックを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度においては、学会参加費用が主たる費用である。校閲費用、雑誌投稿費用については、上記でもふれたように論文投稿の進捗について遅れがあったためほぼ無い。ただし、成果発表において国際会議並びに、SCOPUSなどにインデックスされたジャーナルへの投稿を行う上で、校閲費用や雑誌投稿費用は必要であり、進捗が遅れた論文投稿については、2024年度に持ち越しているため、次年度においてもそれらの経費は必要となる。 また、書籍費用、資料収集費用、研究打合せに関する旅費が必要となる。現状、書籍費用は、物語に関する研究資料の収集に利用し、物品費用は、消耗品の購入の他、今後、研究開発に関する電子機器の他、生成AIを実験的に利用するうえ必要となる経費を予定する。
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