本研究は麻雀において他プレイヤとの結託を行うコンピュータプレイヤ構成のために,従来型の木探索手法を拡張した手法を提案した.従来型のコンピュータプレイヤを用いた麻雀プレイヤは,自分の利益のみを最大化する事を指向し,自己の着手生成においても『きっと他のプレイヤも自分一人の利益のみを追求する筈』という想定で未来の状況を考慮する.そのために,複数のプレイヤが一時的な協力をすることで特定のプレイヤを追い詰めるような挙動をとることができなかった. まず提案手法を実装することで,課題局面において着手生成を試みたところ「他者との暗黙の結託を指向した(と解釈できる)行動」の生成に成功した.この成果によって,本研究の提案手法は「本来は敵である複数のプレイヤ同士が一時的に結託することで,より良い未来を目指す」行動選択を,コンピュータプレイヤにも可能にしたと考えられる.この実験結果と手法の詳細を記して,国内研究会『ゲームプログラミングワークショップ2022』にてポスター形式で発表した. 次に提案手法の計算量の改善を行った.提案手法は探索中に,「他プレイヤたちが別のプレイヤをどのように捉えているか」という情報まで考慮するため,麻雀のような4人対戦のゲームでは計算量がすぐに増大し,実用に適さない.そこで単純なダミープレイヤ達を何千回も対局させてみることで,麻雀のプレイヤは「どのような状況で・他のプレイヤを・どのような相手(協力すべきか否か)と考えるのか」というデータを広範にわたって集計した. この近似的なデータを活用することで提案手法の大幅な高速化に成功するとともに,手法の性能自体が大きく犠牲になっていない事を課題局面の着手生成実験で確かめた.この結果は国内研究会『第51回ゲーム情報学研究会』にて発表した.
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