研究課題/領域番号 |
21K17876
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
玄 大雄 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (50774535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エアロゾル / 不均一/多相反応 / 大気化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が独自に開発してきた「単一粒子分光分析法」を応用し、未開拓 である高イオン強度条件下におけるエアロゾルの化学反応速度定数を決定することを目的とした。 速度定数を測定し、エアロゾルのイオン強度との定量的な関係式を導き、大気化学モデルに実装できる基礎データを取得し、高イオン強度の影響を考慮した地球規模でのエアロゾル反応系の再構築を目指す。 2021年度では、NO2ガスのエアロゾル相での加水分解に着目し、反応実験を実施した。NO2ガスのエアロゾル相での加水分解反応速度定数の算出を様々な相対湿度とエアロゾルの化学組成の条件下で試みた。大気中エアロゾル中に最も含まれる無機塩ならびに有機酸などをモデル粒子として発生し、反応セル内でNO2ガスと反応させ、加水分解反応により生成し硝酸イオンを顕微ラマン分光分析により検出・定量した。NO2ガス濃度を一定に保つことで、エアロゾル相へ溶解したNO2の濃度を一定に保ち、硝酸イオンのラマンピークのから、硝酸イオンの定量およびNO2の反応速度を測定し、反応速度を算出した。得られた結果から、エアロゾルの酸性度と反応速度定数の間には相関がなく、エアロゾルのイオン強度(mol kg-1)に強く依存することがわかった。さらに大気化学モデルに実装可能なデータセットにするため、得られた反応速度定数とイオン強度との定量的な関係の数式化に試み、対数関数を用いて記述することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、NO2のエアロゾル相での加水分解速度に関する実験データを取得し、エアロゾルの反応速度定数へのイオン強度の影響を明らかにすることができた。特に今まで報告されてなかった高いイオン強度条件下(>10 mol kg-1)での反応速度を測定したため、エアロゾル反応系における重要な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果から、対数関数を用いて、NO2の反応速度定数とエアロゾルのイオン強度の関係を簡便な式で記述することができた。今後は共同研究を通して、本成果をを大気化学モデルへ実装し、NO2の加水分解の生成物の一つである亜硝酸ガスの発生量への影響を探る。特に日本を含む東アジアを計算領域として、本研究成果の有用性をモデルを使って評価する。
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