研究課題/領域番号 |
21K17880
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
劉 佳啓 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 特命助教 (80823898)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 風食 / 飛砂 / 流体力学 / 土壌侵食 / 風洞実験 |
研究実績の概要 |
1、黄砂の発生源に生育する草本を想定した模型(円柱・円錐・逆円錐)を対象に、小型境界層風洞及び圧電飛砂計を用い、草本の形状や被覆率が飛砂の堆積量、粗度長、フラックスに与える影響を調べた。その結果、円錐と逆円錐では、被覆率の増加に伴って粗度長が増加し、堆積量の増加傾向と一致した。円柱では被覆率の増加に伴い粗度長は増加したが、ある程度の被覆率になると減少に転じ、ある閾値に収束した。また、飛砂量の観測結果から、円柱は群落上部において飛砂を強く抑制し、捕捉を促進することが分かった。逆円錐では、群落内部において飛砂を捕捉する効果が円錐同様にあり、群落上部では円柱の場合よりも捕捉する効果が高いことが明らかになった。 2、草本の形状と抵抗の関係は、草本の上部と下部の気流の違いに顕著に表れる。これまでの研究結果では、風食防止には逆円錐台形状の植物が適していることが分かった。そこで、逆円錐台形状の植物の遮蔽率が風食抑制効果に与える影響を把握するため、大きさの異なる逆円錐形のアルミ板を使用して葉や茎を模した模型を設計した。各アルミ板がベース面に密着できるように、ベース面の溝構造を工夫することで流体力学的相似則を満たすことができた。アルミ板の枚数を変えて、厚さ5mmの円形の台座に均等に挿入することで、8%から50%まで8つの遮蔽率を得ることが可能になった。 3、風食検出装置(特許申請中)に搭載されている圧電飛砂計を用い、飛砂粒子の流速・流量・粒径を同時に測定できる観測システムを試作・改良した。新たに設計した飛砂計の構造は、降雨や雪からのノイズを最低限に抑えることができる。また、直径1cmの圧電振動子を用いた超音波センサの固定部のホルダー・ジャック部を分割しないように差し込み式に変更し、野外観測でセンサの交換やメンテナンスを行うことを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「抗力特性と堆積・侵食量を計測するための観測システム」は、ひずみケージ、ロードセル、実験台の三つで構成される草本模型群落の抗力特性と風食特性を測定する観測システムである。堆積・侵食量の測定に関しては、実験台表面にロードセルを装着することで、模型群落に捕捉された砂の重さの時間変動を高精度に測定できるよう製作・改良し、風洞においてその実用性を確認した。しかし、令和3年12月までに完成予定であった実験台支柱に固着したひずみケージは、風や飛砂の衝突からわずかな抵抗変化を測定するため、実験台支柱の材料の熱膨張特性とゲージの長さや抵抗値など調整の追加実験を行う必要性が生じた。これらの課題が解決できれば、模型群落に捕捉された砂の重さの時間変動を高精度に測定すると同時に風に対する抗力特性の計測が可能になる。 「飛砂粒子の流速・流量・粒径を同時に測定できる観測システムの開発」に関しては、飛砂センサーケースの構造を改良し、信号増幅器の基板を設計・製作することにより、飛砂計の精度を向上させるという目標を達成することができた。 「模型の形状・遮蔽率・柔軟性の違いによる飛砂の抑制効果の定量的解明」に関しては、草本の形状・遮蔽率を模した模型の設計と作成が予定通りに完成した。また、風洞実験による草本の形状と被覆率が飛砂量と粗度長に与える影響を解明した。これらの成果は、本課題の最終的な目標である「飛砂の抑制に有用な草本を選抜するための科学的根拠を提示する」を進展させる大きな要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
「抗力特性と堆積・侵食量を計測するための観測システム」に関しては、すでにロードセルの測定精度や実用性が確認されているので、ひずみケージの性能に合わせた適切な実験台支柱用の素材を選択するための風洞実験を行うことで、観測システムの完成に取り組む。 「飛砂粒子の流速・流量・粒径を同時に測定できる観測システムの開発」に関しては、砂粒子が圧電振動子に衝突した際に発生する電圧信号から衝突する飛砂の流量を高精度で測定できる段階にあるので、各粒径の砂粒子が圧電振動子に衝突する風洞実験を行い、判別出力部の増設に必要な基礎データを収集する。この測定結果を粒子画像流速測定システムによる画像解析の結果と比較・検証することで、観測システムの完成に取り組む。 「模型の形状・遮蔽率・柔軟性の違いによる飛砂の抑制効果の定量的解明」に関しては、モンゴルに生育する植物の形状を模した模型を用い、飛砂の堆積量と流体力学特性に対する形状や被覆率の影響について予定通りに検討したので、今後は開発した草本模型と観測システムを用いて、飛砂抑制効果の評価指標の開発に資する基礎データを得る。
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