令和5年度は、ミミズが形成した土壌団粒(フン団粒)の安定同位体比分析等を実施するとともに、フン団粒を長期間培養する新たな実験系を構築することで、団粒の分解特性や崩壊時間を評価した。これにより昨年までに示されたミミズが形成した土壌団粒は、土壌中で分解されにくい状態で維持され、長期的に土壌炭素を貯蔵するという可能性を検証した。その結果、ミミズによって形成された団粒はコントロール団粒と比較して全炭素量が有意に増加していた。また、培養期間中(~196日間)におけるフン団粒重量の有意な減少は認められなかった。さらに、フン団粒のδ15N値が、コントロール団粒と比較して有意に低い値を示したことから、フン団粒は易分解性の炭素が団粒内に隔離され、長期的に分解されにくい状態を維持した可能性が示唆された。これらの結果から、ミミズのフン団粒は土壌中の有機物を隔離し、分解されにくい状態で維持されるため、長期的にCO2放出を抑制させる効果があることが示唆された。 研究期間全体を通じて、土壌から放出されるCO2と形成される土壌団粒を定量評価が可能な培養実験系を構築し、ミミズが土壌炭素に与える短期的および長期的な分解・貯蔵作用を検証した。その結果、ミミズの活動初期段階では、土壌有機物の摂食によって土壌からのCO2放出が促進されるが、長期的には形成されたマクロ団粒による土壌有機炭素の隔離が生じ、CO2放出が抑制される可能性が示唆された。本研究によって、ミミズが土壌CO2放出に与える影響は、時間経過とともに変化することが示された。
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