研究課題
2023年度は、海洋エアロゾル試料や、日本の陸上で採取されたエアロゾル試料を用いて、全鉄・水溶性鉄の濃度と同位体比を求めるための酸分解、超純水抽出実験、同位体比分析などを主に進めた。また、時空間変動を把握する目的で、追加で7月に西部北太平洋亜寒帯・亜熱帯での航海にも参加し、試料採取を行った。さらに国内の学会やシンポジウムでも発表を行った。研究助成期間を通して、抽出実験と同位体分析、化学種解析を併せた結果から、(1)陸上や、海上の沿岸域では、高い鉄溶解性を持つ人為起源エアロゾルが選択的に水溶性鉄として溶け出すことで、エアロゾル全体の溶解率の増加に寄与していること、(2)外洋域ではエアロゾル中の鉄に占める人為起源の割合が少なく、エアロゾル全体の溶解性には大気輸送中に酸などと反応することによる溶解性の増加がより大きく寄与していることが明らかとなった。また、鉄濃度は春先に高く夏に低くなり、鉄の溶解性は夏に高くなる傾向が見られた。また、人為起源鉄の割合は夏に高くなる傾向が見られた。この季節変化には鉱物ダストの発生量の増減や風向きの季節変化が大きく影響していると考えられる。海洋性エアロゾルでもこのような濃度や水溶性の季節変化がはっきりと見られたことは、定点観測が難しい海洋上のデータとしては特に大きな成果と言える。本研究結果の一部は論文投稿中であり、他の結果も学会発表や論文発表を進めていく予定である。
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