研究課題/領域番号 |
21K17892
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
齊藤 洋克 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 研究員 (70851244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経行動毒性 / 化学物質早期ばく露 / 雌雄差 |
研究実績の概要 |
本研究では、個体の早期における神経シグナルのかく乱によって成熟後に顕在化する中枢神経系への影響と、その雌雄差がどのように生じるのか明らかにすることを目的とする。モデル化学物質を幼若期マウスに投与することにより、成熟後に生じる中枢神経系への影響の性差(影響の違いとしての雌雄差)を行動試験により評価する。ばく露により行動影響が疑われた化学物質については、対応する中枢神経系の構造的・機能的変化を捉えるための解析を行う。雌の行動は、一般に性周期の影響により雄個体に比べてデータのばらつきが大きくなるとされているが、この点に関して明確な根拠を示した報告はない。そのため、選択した行動試験が雌マウスの性周期の影響を受けず、安定して行動影響を捉えられるか否かについてもあわせて検討する。 今年度は、性周期によりばらつきが大きいとされる雌個体の行動試験結果の妥当性について評価を開始した。予備的検討として、自発運動量・情動行動・学習記憶能に着目し、オープンフィールド試験、明暗往来試験、条件付け学習記憶試験からなる行動試験バッテリーにて、生後12~13週齢のC57BL/6N雌雄マウスの行動試験から得られたデータの比較を行った。その結果、雌個体におけるいずれの行動試験データについても、雄個体と比べて大きくばらついているとは言えず、雄個体において観察されるばらつきとほぼ同様の分布を示していた。すなわち、現時点では、雌個体の行動試験データは雄個体同様に評価できる可能性が考えられた。一方で、サンプル数の問題等、データとしては未だ不十分であると考えられ、今後、例数を増やすとともに、各性周期に依存して行動試験結果にばらつきが生じるか詳しく検討をすすめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
性周期の判定を行うタイミングにより行動試験に及ぼす影響の懸念や、各性周期における行動試験データの収集について多くのデータを必要とし、当初の研究計画よりも時間を要していることから、やや遅れていると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続き雌個体の行動試験データの収集および性周期の判定による行動試験結果の分類をすすめ、各性周期の行動試験結果に有意な差があるか解析する。また、モデル化学物質を幼若期マウスに投与することにより、成熟後に生じる中枢神経系への影響解析についてもすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
雌個体の行動試験データ解析については、多くのデータを収集して行う必要があることから、当初の研究計画よりも時間を要しており、今年度に行えなかった分についてもあわせて検討を行うため、この時に繰越し予算を使用する。その他の次年度予算は当初の研究実施計画に基づいて使用する。
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