研究課題/領域番号 |
21K17895
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
哈 布尓 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (80749060)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水銀 / 人為的排出 / 水俣条約 / 環境影響 / 物質フロー / 有効性評価 / 水銀制御技術 |
研究実績の概要 |
水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)は日本国政府の主導で採択された。締約国において、条約の着実な履行のためには、様々な技術及び制度を複数組み合わせて対策を講じていくことが求められている。さらに、水俣条約の発効に伴い、特定分野での水銀の使用禁止・制限や輸出入禁止等により世界の水銀挙動が大きく変動することが見込まれる。そこで、社会システムにおける水銀排出の物質フロー及びその排出による環境影響分析が喫緊の課題である。 今まで水俣条約の有効性評価に資する人為的活動下での水銀の物質フロー、水銀排出による環境影響評価を定量的評価した。具体的には次の二つの通り実施していた。 A.アジア地域の発展途上国での急速な人口増加や経済発展に伴って、各国・各地域の経済活動を支える鉱石や石炭など水銀を含有する鉱物資源の利用拡大に起因する水銀排出量の増加が依然として懸念される。そこで、資源の採掘活動に起因する水銀量等を含めて、中国とマレーシアの水銀の動態(フロー・ストック・排出など)を把握した。さらに、水銀動態に関する物質フロー情報を整備した。アジアおよび対象国らに対する水銀に関する物質フローは構築されたものの、現状(条約発効後)と過去(条約発効前)の水銀挙動の変化を比較していない。そこで、水俣条約発効前と後の人為的活動下での水銀排出源の同定と水銀排出量の定量化を行った。 B.ライフサイクル思考を適用することで、特に中国とマレシーアを事例に水俣条約を履行する為の対策プロセス等の導入に伴う環境への影響を未然に把握すると共にその影響を定量化し、条約前の環境影響との比較を行った。水銀排出による環境影響分析を行うことで今後の水銀汚染防止及び管理方策に資する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。ただ、新型コロナ感染症流行の背景下で、移動制限等により、当初計画していた現地への調査、特にマレーシアと中国への調査はまだ実行されず、今後の研究の推進計画に考慮しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
水俣条約の発効に伴い、特定分野での水銀の使用禁止・制限や輸出入禁止等により世界の水銀挙動が大きく変動することが見込まれる。急速な工業発展に伴ったアジア圏における大気への水銀排出量は世界全体の約40%を占めており、水銀の使用と排出が圧倒的に多いアジア諸国、特に発展途上国に対して、水銀挙動により水銀管理政策への新たな挑戦が求められている。今後は具体的に次の通り研究を遂行していく予定である。 A.日本の水銀の動態(フロー・ストック・排出など)を把握する。さらに、水銀動態に関する物質フロー情報を整備する。さらに、ライフサイクル思考を基づいて環境影響を評価する。水俣条約の影響を踏まえた途上国や新興国らにおける水銀の物質フローを比較し、今後の水銀の管理方策に資することを目指す。 B.将来の水銀排出削減シナリオの定量的評価に関する既往研究はない。そこで、本目標では水俣条約の履行を含む将来の水銀排出削減シナリオを定量的に描く水俣条約を履行する為の製品・製造プロセスにおける対策等を抽出・整理する。人為的排出源からの水銀制御技術の整理を行うとともに、新たな制御技術に関する基礎的情報を取得する。最後に、産業エコロジー研究分野で用いられている物質フロー・モデル設計・シナリオ分析の知見を活かして、水俣条約の有効性評価に資するシナリオ分析を進める。 C.当初計画していた現地への調査(特に中国とマレーシア)を実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナ感染症流行の背景下、移動制限等による当初計画していた現地への調査、特にマレーシアと中国にまだ渡航できず、その分次年度使用額が生じた。 使用計画:旅費(554,000円)の一部に充実する。
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