研究実績の概要 |
耐性菌発生源の追究と制御は喫緊の課題であるが、現在耐性菌はヒトのみならず動物・環境からも検出されおり、多角的な解析と包括的な理解が必要である。本研究は、医療関連感染予防の観点からヒトおよび環境排水中に分布する耐性菌の耐性遺伝子や菌の特徴と関連性について遺伝学的背景から解明し、また耐性遺伝子拡散機構について明らかにすることを目的としている。 2023年度は、これまでのサンプリングにより分離・保存された菌株について、分子遺伝学的解析を進めた。病院排水より収集された大腸菌53株について、寒天平板希釈法による薬剤感受性試験、PCRとDNAシークエンシングによる薬剤耐性遺伝子の検索と型別、ゲノム型別を実施した。その結果、CTX-M-27, CTX-M-15, CTX-M-14などESBL産生し、ST131, ST38, ST1193などに属する大腸菌が多く検出され、ヒトの臨床より報告のある大腸菌と同様の特徴を持った株が検出された。また、同排水よりカルバペネマーゼであるIMP-1やGES-24を産生するDelftia tsuruhatensisも検出され、詳細なゲノム構造を解析するために次世代シークエンス解析を実施している。これらカルバペネマーゼ遺伝子はすべてプラスミド性に存在し、30~65 kbpのサイズであり、またこれまで報告のない独自の構造を有していた。 上記研究結果は、第93回日本感染症学会西日本地方会学術集会、第35回日本臨床微生物学会総会・学術集会で報告した。
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