研究課題/領域番号 |
21K17907
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
今野 大輝 東邦大学, 理学部, 講師 (40825832)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多孔性錯体結晶 / 金属有機構造体 / 環境浄化 / 水質浄化 / MOFs / ZIF-8 / UiO-66 |
研究実績の概要 |
多孔性錯体結晶である金属有機構造体 (Metal-Organic Frameworks, MOFs) の水質浄化性能を顕在化させるためには、微粒子化による細孔内物質移動の制約緩和や官能基修飾による吸着質との親和性向上が有効である。本研究課題では環境調和型の形態制御型MOFs合成や簡易手法による官能基修飾MOFs合成を提案し、様々な機能集積型MOFs結晶の創製に挑むものであって、さらに得られたMOFs結晶を水質浄化剤として検証することで、生活排水中の難分解性有機化合物や酸性坑廃水中の重金属イオンなどの有害汚染物質に対する吸着性能を明らかにしながら、新たな水質浄化剤としての提案を目指すものである。 初年度は界面反応場型フェムトリアクター法によるMIL-100(Fe)合成を、そして塩酸添加ソルボサーマル法によるUiO-66合成を実施した。どちらも高い比表面積や細孔容積を有する結晶が得られており、従来法と変わらない結晶性を有する構造が得られていることが確認できた。特に塩酸添加ソルボサーマル法によるUiO-66結晶は、従来法に比べて粒子サイズが低減されており、微粒子化も可能であることが明らかとなった。 MOFs結晶の水質浄化性能の検討においては、水中重金属イオンの吸着除去にはZIF-8を、水中有機フッ素化合物の吸着除去についてはUiO-66を適用し、その効果を検証した。ZIF-8は鉛イオンやカドミウムイオンに対して高い浄化性能を発揮し、微粒子化によって吸着速度が向上することを実証することができた。またUiO-66についてはペルフルオロオクタンスルホン酸に対して十分な吸着除去性能を発揮したが、さらにこのUiO-66骨格へアミノ基を修飾させることで、ペルフルオロオクタンスルホン酸に対する吸着性能をさらに向上できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MOFs合成については、フェムトリアクター法によるMIL-100(Fe)結晶の合成と、塩酸添加ソルボサーマル法によるUiO-66結晶の合成に成功している。またUiO-66結晶については、高い結晶性を維持した状態での微粒子化を達成できている。さらに水質浄化性能については、ナノ結晶化したZIF-8が水中重金属イオンに対して高い除去性能(高速・高容量)を発揮することと、UiO-66についてはアミノ基を修飾することによって水中ペルフルオロオクタンスルホン酸に対して高い除去性能(高速・高容量)を発揮することを実験的に明らかにしている。このようにMOFs結晶を水質浄化剤として適用することを目指した場合に、結晶サイズの微粒子化や官能基修飾が吸着特性を向上させるために有効であることを既に報告しており、また速度論や平衡論による解析によっても十分に考察できている。以上のように、MOFs結晶合成と水質浄化性能評価の観点から、研究が順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度はフェムトリアクター法およびソルボサーマル法による結晶合成を推進し、ある程度の知見を獲得することができた。今後はこれらの合成手法を深堀するとともに、合成条件の最適化を図る。具体的に結晶サイズの微小化については、新たにMAF-6への適用を目指し、官能基修飾については、新たにMIL-53(Al)への適用を目指す。いずれも先行研究によっていくつか手順が報告されているが、これら手順の簡略化を図りつつ、環境に負荷をかけない合成法を目指していく。また水質浄化性能評価については、重金属イオンや有機フッ素化合物だけではなく、工業排水中に含まれる難分解性有機化合物、農業排水や生活排水中に含まれる医薬化合物や抗生物質などに対しても検討を開始し、汚染物質の対象を広げていく。このようにして結晶合成と水質浄化の両面でさらに研究を発展させていくことで、MOFs結晶の水質浄化プロセスへの適用可能性を明らかにしていく。
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