研究課題/領域番号 |
21K17908
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宮原 佑宜 東京工業大学, 物質理工学院, 特任助教 (00837768)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 化学合成独立栄養細菌 / 生分解性プラスチック / 還元力供給システム / ギ酸デヒドロゲナーゼ / 亜リン酸デヒドロゲナーゼ / 二酸化炭素資源化 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、新規な還元力供給システムを構築し、水素ガスによる爆発の危険性を完全に解除した独立栄養培養系の構築を試みる。また、生分解性プラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を細胞内に合成、蓄積する化学合成独立栄養細菌Ralstonia eutrophaを使用することで、二酸化炭素からのPHA生産手法の創生を目指す。
本年度は、(1)水素ガス以外の物質から還元力を供給するために、亜リン酸デヒドロゲナーゼの異種発現系の構築および(2)爆発下限界の水素ガスを用いた培養系の構築を行った。 (1)亜リン酸を酸化する際に還元力を獲得する酵素である亜リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子をクローニングして発現ベクターを構築し、R. eutrophaへと形質転換した遺伝子組換え株を取得した。構築した組換え株における亜リン酸デヒドロゲナーゼの酵素活性および培養液中の亜リン酸消費が確認され、R. eutropha細胞内における亜リン酸デヒドロゲナーゼの異種発現および亜リン酸を用いた還元力供給に成功した。次いで、組換え株を水素ガスを用いずに独立栄養条件下で培養を試みた。水素ガスを使用しない条件では、菌体増殖は確認できず、還元力供給が不足していること、あるいは独立栄養条件での増殖に必要な酵素群の発現が十分ではない可能性が考えられる。このため、還元力供給および独立栄養系の酵素発現を補うために、(2)爆発下限界の濃度で水素ガスを供給する培養系を構築した。これにより、良好な菌体増殖を達成し、細胞内に60wt%以上のPHAを蓄積させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素ガスに代わる還元力として亜リン酸の酸化反応に着目し、R. eutropha細胞内で亜リン酸デヒドロゲナーゼの異種発現に成功した。また、爆発下限界の水素ガスを断続的に供給することで爆発リスクを解除して培養を行うことができた。このように、当初の計画通りに研究が進展したため、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、ギ酸デヒドロゲナーゼあるいは亜リン酸デヒドロゲナーゼを異種発現させた組換え株を構築し、炭酸固定に必要な還元力を供給できるシステムを構築し、水素の代わりの還元力としてギ酸や亜リン酸が利用可能かどうか検討を行う。また、上記の組換え株を低濃度水素ガスで培養を行うことで、高効率なPHA生産が達成されるのか検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、消耗品や試薬等の購入が当初の計画よりも少なく済んだこと、人工合成遺伝子の取得が遅れたことがあげられる。次年度は、人工合成遺伝子、遺伝子試薬やキット試薬などに有効活用し、効率的に研究を進める。
|