研究実績の概要 |
地球規模で拡大を続ける人間活動が生態系に及ぼす影響を理解する上で,マクロ生態学が対象とするような空間スケールにおける議論が欠かせない。特に種の絶滅リスクの推定は,生物多様性保全の観点から再重要課題の一つであり,これをグローバルスケールにおいて推定するという課題に数理的な手法を用い取り組んだ。 種の絶滅リスクの指標として,対象種の分布域の減少度合いを用いることが,IUCNレッドリストの作成時などにも利用されている様に標準的な手法であり,本研究でもこれを絶滅リスクの指標とした。またこの際,グローバルスケールにおける種の分布域の記述が必要となるが,これには筆者が過去の研究で構築した幾何学的アプローチによる記述手法(Takashina et al., Journal of Theoretical Biology, 461:2019)に,様々な分類群で確認されている様な,対数スケール上で左に歪んだspecies range size frequency distributions(RSFD)を持つ様な仮定を取り込むという拡張を施し記述した。 また,先行研究とは異なり,人間活動の影響の時空間的な拡大を,新たに構築したLand-use dynamicsモデルを用い記述した。これは,空間上の複数の地点において開発が同時に起きたり,またある時刻において空間上に新たな開発地点が現れるといった状況を記述でき,より実際的な開発の様子を表現する。 これらの生態学的な側面を記述するモデルと,社会的な側面を記述するモデルを組み合わせることで,開発が進むにつれどのように絶滅リスクが変動するかをグローバルスケールにおいて議論した。また,先行研究において種の分布域を用いる絶滅リスクの定義の仕方がいくつかあるが,本研究ではそれらの複数の方法を用い(例:種の分布域がx%消滅したら絶滅と定義する)議論した。
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