研究実績の概要 |
本課題では、アルミニウムや特殊鋼、ニッケル、コバルトに着目し、自動車の軽量化及び電動化の進展に伴うこれら金属資源の需給バランスの変化、アルミニウムのリサイクル新技術の開発と応用、並びに使用済み製品の循環利用による金属資源の循環構造の変化を明らかにした。現在のアルミニウム合金のリサイクルは鋳造材やダイカスト材へのダウングレードリサイクルが一般的である。これら再生アルミニウムの主な最終用途は自動車エンジンブロック等であるが、世界で加速する電気自動車へのシフトに伴いエンジンの需要が減少し、2040年には世界の自動車産業において364万トンの再生アルミニウムが供給過多になることを示した。また、東北大学グループは、銅やシリコン等の合金化元素を大量に含むアルミニウムスクラップを純アルミニウムに再生できる固体アルミニウム溶融塩電解技術を開発した。本技術の応用によるアルミニウムのアップグレードリサイクルの実現可能性及び将来のアルミニウムの循環破綻回避の可能性を提示した。さらに、製品の製造・使用・廃棄・リユース・リマニュファクチャリング・リサイクルによる多層な資源循環構造における特殊鋼、ニッケル、及びコバルトの動的な循環を定量的に評価できるマテリアルフロー統合廃棄物産業連関モデルを構築した。使用済みエンジンの全量リサイクルを一部リユース・リマニュファクチャリングに代替することで、製品ライフサイクルの時間的遷移を通じて特殊鋼・ニッケル・コバルトそれぞれの損失回避効果を明示した。これにより、循環経済モデルにおけるリユース・リマニュファクチャリングの導入効果を評価する物差しや数理モデル、リユース推進のための科学的なエビデンスを提示した。これら成果は、学術誌Nature及び環境科学分野のトップジャーナルResources, Conservation and Recyclingに掲載された。
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