研究課題/領域番号 |
21K17919
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
兼松 祐一郎 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任助教 (00839714)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 技術シミュレータ / 地域システム / オープンデータ / ウェブアプリケーション / 再生可能エネルギー / 木質バイオマス |
研究実績の概要 |
①シミュレータ開発:過去に自身が構築していた木質バイオマスによる小規模熱電併給のシミュレータについて、これまでは自身または関係者や専門家による利用を前提とした構造であり、また特定の条件や地域を前提としていたが、より幅広く利用可能とするためにモデル構造やデータセットを見直した。また、Excel上で実装していたが、一部をPythonに移植した。 ②データベース開発:近年公開が進みつつあるオープンデータのうち、再生可能エネルギー(再エネ)導入ポテンシャルおよび固定価格買取制度下での申請・導入実績のデータについて、ウェブアプリケーションへの実装を想定したデータ形式に変換してデータベース化を行った。また、上記に含まれない木質バイオマスの資源ポテンシャルについて、既往研究による都道府県別の持続可能な伐採量の推算データと市区町村別森林面積データを用いて、市区町村別の木質バイオマス資源ポテンシャルデータとして整備を進めた。また、導入候補となる技術を収録したデータベースの開発に向けた検討を開始した。(詳細は④に記載) ③情報基盤としての統合:②で収集と整理を進めた再エネ導入ポテンシャルと導入実績について、簡易な操作でグラフを描画し比較を行うことができるウェブインターフェイスを設計し、その実装と公開を行った。特殊なコンピュータ環境を必要としないよう、標準的なウェブブラウザさえあれば利用できる形式とした。 ④共創的仕組みの検証:エネルギー技術や環境技術の開発や導入を担う企業群が所属する民間の協会メンバーへのヒアリングを行い、技術データベースの要件を検討した。また、自治体職員や地域産業の構成員との対話から、この情報基盤によって技術導入の障壁を最小化するためには、特に両者の間の情報ギャップを埋めるための機能の必要性が高いことを明確化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の目標では、本年度は①シミュレータ開発としてこれまでの研究で構築した技術モデルを精査し、②データベース設計に向けたパラメータ類の整理やオープンデータの整理、③情報基盤としてのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)への組込みに向けた改変を行い、他者からもアクセス可能なウェブシステムとして試作すること、④共創的仕組みづくりの検証として、技術開発者および地域へのヒアリングに基づき、情報基盤の要件定義のための情報を収集することを掲げていた。研究実績の概要に記載の通り、これらはいずれも達成できており、おおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、年度序盤を目標に試作版GUIを用い、特定地域の関係者を対象とした地域システム計画ワークショップ(WS1)を行う。WS1では地域資源マッピングに基づく候補技術の選定までを対象とし、特に、オープンデータによる資源可視化によって検討可能/不可能な範囲を明らかにする。また、ここから情報基盤のβ版構築に向けて必要な機能を抽出する。また、WS1参加者を中心に地域、技術者ともにデータ登録テストへの協力者を募り、実データの蓄積を進める。これらに基づき、シミュレータやデータベースの改良、拡張を行い、情報基盤β版を構築する。 令和5年度は、共創的仕組みの検証として情報基盤β版および蓄積した実データを用いた地域システム設計ワークショップ(WS2)を行う。WS2では、技術導入効果の定量的評価と複数案の比較を目指して、評価の詳細度として、導入技術の重要なパラメータ(種類、規模など)を特定し、全体システムの大まかな物質・エネルギー収支を求められるレベルを目指す。この評価に基づく意思決定により、具体的な装置仕様の決定に向けた基礎情報が得られることを想定する。この結果に基づき、不確実性解析などのシミュレーション機能の拡張や、資源と技術のマッチング機能の実装を行い、情報基盤Ver.1を構築、リリースする。以上のように、すべての機能を揃えてから大型のリリースするのではなく、小規模にモジュール単位で実装と機能追加を行うアジャイル型の開発を指向する。 いずれのワークショップもコロナ感染症の状況によっては対面での現地開催が困難になりうるが、これまでの研究活動においてオンラインワークショップの開催実績とノウハウもあり、オンラインでの対応が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響による出張制限から旅費を使用できなかった。研究促進のために一部を物品費とその他(外注費)に使用したが、なお次年度使用額が生じた。次年度は可能であれば旅費に、出張が難しい場合はプログラムコーディングやデータベース構築の外注費に使用することで研究を推進する。なお、出張が難しい場合も、オンラインワークショップによって研究計画への支障がないように進める。
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