研究課題/領域番号 |
21K17949
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
月野 楓子 沖縄国際大学, 総合文化学部, 講師 (70844710)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 沖縄移民 / アルゼンチン / 移民社会 / 日本人移民 / 復帰運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二次世界大戦後初期のアルゼンチンにおける沖縄移民社会にみられた「祖国復帰」をめぐる運動について、史資料及び聞き取りを通して明らかにするものである。 研究課題の一年目にあたる2021年度は、あらたな刊行資料の収集とこれまでに収集した資料の整理を行った。新型コロナウィルス感染症の影響によって海外調査については実施できなかったが、資料を分析することで移民社会における人々のつながりや文化についてあらためて考察する期間となった。また、上記について再考することは社会学や人類学の視点から本研究課題を捉え直すことにもつながっているため、報告が決定している学会においてはこうした知見を含めた成果を公表できるよう準備を進めている。 研究対象であるアルゼンチンの沖縄移民社会に加えいまひとつ行っているのは、神奈川県や大阪府に暮らす南米帰りの沖縄出身者に関する資料の収集である。南米でも沖縄県でもない地域に暮らす彼らに焦点を当てることで、アルゼンチン一国に限定されない多様な移民社会のありようを描き出せるのではないかと考え、国内の調査も開始した。 なお、2022年は本研究課題と関係の深い沖縄の本土復帰50年の年にあたるとともに、移民たちが「母県」沖縄に一堂に会する「世界のウチナーンチュ大会」が行われる年でもある。沖縄県及び海外の移民社会においてこれらの事柄がどのように取り上げられ、論じられるのかに着目し、研究課題への理解を更に深めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね計画通りの進捗状況ではあるが、新型コロナウィルスの感染拡大による海外調査実施の可能性が好転しなかったため「やや遅れている」とした。研究課題について取り組んだ内容としては、関連資料や図書の収集、分析を中心に行った。予定していたアルゼンチンを含む海外での現地調査を断念せざるを得なくなった影響は少なくないが、国内で実施可能な調査及び論文執筆等を行っている。 国内での調査については沖縄、神奈川、大阪において新たな協力者を得ることができたため、次年度以降インタビューを行いたいと考えている。資料収集のみならず聞き取り調査が本研究において重要な位置を占めるのは、対象としている時代に関する記録がアルゼンチンにおいて十分に保管されているかどうか未だ明確ではなく、当事者による証言が貴重な史料となるためである。
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今後の研究の推進方策 |
今後については以下の3点を中心に研究を進める。 1.現地調査: 新型コロナウィルス感染症の流行が終息した際には可能な限り早い段階で現地へ赴き、調査を行う。インタビュー対象者の多くが高齢であることから、現地での聞き取り調査は積極的に行う必要があると考えている。また、沖縄、神奈川、大阪での聞き取り調査についても感染流行状況が落ち着いたら再開したい。 2.史資料調査: 国立国会図書館の閲覧制限が緩和されているため、調査対象時期の資料収集を再開する。とりわけ新聞『らぷらた報知』は戦後のアルゼンチンにおける日系社会及び沖縄系社会について知ることのできる貴重な資料である。本研究課題の当該時期である1960年代から1970年代にかけての同紙は欠号も少なく比較的良好な状態でマイクロフィルムで閲覧ができるため、集中的に閲覧を行いたい。 3.史資料の分析: 入手した資料を最大限活用し、研究成果を発表することを計画している。すぐに現地調査が再開できない場合には必要に応じて調査協力者へ依頼し、オンラインや紙面でのインタビュー実施についても検討をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行によって予定していた海外出張と国内出張を取りやめたことにより、使用額が減少した。また出張の取りやめに伴い、旅費だけでなく支払い予定であった謝金及び現地で購入・収集予定であった史資料にかかる金額も未使用になったため次年度使用額が生じている。一方で、国内で収集可能な資料を予定よりも多く入手することができた。次年度は延期している国内外の現地調査にも活用し、研究を進める予定である。
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