研究課題/領域番号 |
21K17961
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
二ツ山 達朗 香川大学, 経済学部, 准教授 (20795710)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イスラーム / イコノクラスム / 偶像破壊 / 北アフリカ |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、イスラームにおけるモノと観念の関係が西洋的・世俗主義的なものとどのように異なり、それによってどのような軋轢や問題が生じているかを、明らかにすることにある。具体的には、ムスリムによって聖者廟が破壊される事例と、預言者の風刺画に対するムスリムの反応に焦点をあて、それらをめぐる言説を現地調査により実証的に分析することで、イスラームと西洋的・世俗主義的なモノと観念の差異、を明らかにする。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響で、全面的に海外渡航が禁止され、また国内においても長期にわたり県外移動が禁止されたことなどにより、現地調査や文献資料の収集を行うことが叶わなかった。 代替として、入手可能な文献を収集し、先行研究の分析を行った。具体的には、イスラームのみならずモノと宗教の関係性に関するものや記号論に関する先行研究を幅広く収集し、イコノクラスムについての議論を精査・整理した。またイスラーム地域のイコノクラスムの事例を扱った先行研究を収集するとともに、それらの議論の課題について考察した。加えて、国内で実施できる情報収集として、インターネット上の記事から中東地域・欧州地域におけるイコノクラスムをめぐる事件を網羅的に収集するとともに、それらの事件についてのSNS上の言説を収集した。 現地調査が実施できなかったために、当初の計画とは異なるものの、日本語の雑誌論文1本、オンラインでのシンポジウムにおける発表1本、章分担での論考2本を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で海外渡航や県外移動が禁止されたこと、本務先の学務や地域連携事業が多忙を極めたことなどにより、申請時の計画とは異なる進捗状況となった。しかしながら、国内で行った情報収集によるデータを用いて一定の研究成果を発表した側面もあるため、「やや遅れている」とした。 具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航が全面的に禁止され、現地調査によるデータ収集が実施できなかったことは、研究課題の遂行に少なからず影響を与えた。また、長期間にわたり県外移動が禁止されたことも、研究の遂行を妨げた。移動が解禁になった時期に対面でのミーティングを実施し、またオンラインでのミーティングも行ったが、いつ県外移動が可能になるか解らない状態が続いたため、研究計画が立てられず、他機関との連携・学術的協力関係は絶たれた。加えて、他研究機関の文献資料を用いることができなかったことも、研究の遂行を妨げた。 本務先においては、教務委員会を務め、新型コロナウイルス感染症対策等で時間をとられることが多く、加えて地域連携負担なども増えたことにより、当初想定していた研究エフォートが割けなかったことも、研究の進捗を妨げた。 これらの要素が重なったことにより、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、中間年度にあたるため、渡航制限が緩和されれば、出来る限り現地調査に従事し、データの収集に努める。具体的には、申請書の研究計画に記載の通り、エジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコの北アフリカ諸国において、多様なムスリムにインタビュー調査を行う。また、新型コロナウイルス感染症の影響で出入国が難しい国々もあるため、他の中東諸国へ変更することも代替案として考えている。 またこれらのデータを、2021年度と通じて行った先行研究の課題や、イスラーム以外のイコノクラスムの理論的議論と照らし合わせることで、研究成果の公開につなげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、海外渡航による現地調査が禁止され、また国内出張も制限がかかったため。
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